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【報告】P4Eワークショップ:「学校」をめぐる哲学対話(1)

2014.06.12 梶谷真司, 清水将吾, 神戸和佳子, Philosophy for Everyone

2014年6月7日から8日の2日間、東京大学駒場キャンパスにて、「学校」を主題とした哲学対話のワークショップが開かれた。およそ2年前からUTCPのプロジェクトのひとつとなっている ”Philosphy for Everyone” は、教育実践としての ”Philosophy for Children (P4C)” に着想を得ている。今回のワークショップは、これまでの活動の原点に返って、あらためてその特性と意義を捉えなおそうとするものでもあった。

7日は、駒場コミュニケーションプラザの和室に、学校教員をはじめ教育関係者が40名ほど集い、「子どものための哲学(P4C)」の学校での実践について、研究会が開かれた。まず、すでに授業や学級運営にP4Cを取り入れておられる3人の先生方が、その実践について発表された。

神戸大学附属中等教育学校の中川雅道先生は、P4Cを取り入れた国語の授業の様子を紹介された。そして、P4Cの重要なポイントである「知的な安全性 intellectual safety」をいかに意味あるものとするか、と問題提起され、ご自身が授業の中で、どのような観点から生徒を見て、どのような配慮をしているのかを、メイヤロフのケア論を参照しながら説明された。

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続いて、東京高等専門学校の村瀬智之先生が、授業に導入されている様々な形式の哲学実践の中から、「サイレント・ダイアローグ」というワークを紹介された。これは、生徒が紙に「1. 問い」「2. 問いに対する考え」「3. 2への反論」「4. 2と3との共通点と、根本的な対立点」を次々に書き込んでいくというものだ。参加者全員が、生徒として、このワークを体験することができた。

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最後に、長野県望月高等学校の綿内真由美先生が、倫理の授業での実践を紹介された。望月高校の地域校としての特性、そこに通う生徒たちの特性に触れながら、昨年度一年間の実践の報告と、今年度の展望を語られた。また、授業の一部を切り取られた映像によって、実際の教室での対話の雰囲気や、楽しみながら哲学的思考を深めていくための、いくつもの細やかな工夫が伝えられた。

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今回発表された先生方は、それぞれまったく異なる学校環境の中で、様々な教育的場面、様々な科目での実践をされており、すべてに共通する理念や方法と、それぞれに異なった効果や困難が浮き彫りとなった。どの先生も、知的な安全性や議論の論理性を重視し、また哲学的な思考と対話の大切さを共有しながらも、それぞれの学校や授業でのニーズに合わせて、実践方法を工夫し、試行錯誤し続けておられる様子が印象的であった。

3人の先生方の発表に続いて、参加者全員でのディスカッションが行われた。いわゆる「質疑応答」の形式ではなく、「子どものための哲学」の雰囲気や方法を少しでも体感していただくため、P4Cスタイルでの対話を行った。「遠慮しがちな生徒や乗り気でない生徒を対話に引き込むには、どのような工夫があるか」「知識と哲学対話における思考との間には、どのような関係があるか」などの問いが出され、非常に短い時間ではあったが、これらの問いについて、参加者全員で考えを深めていった。対話と思考にゆっくりと入っていく感覚を、ほんの少しではあるが共有できたのではないかと思う。

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この日は研究会終了後も、日付が変わるまで続いた懇親会で、またさらに宿泊会場で、参加者の活発な交流と意見交換が続けられた。

―続く―

(神戸和佳子)

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