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時の彩り(ラスト・ラン) 152

2014.04.08 小林康夫

★ 3月のパリの「Et」シンポジウムは発表した学生たちのブログがすでにアップされているので、もうひとつ、わたしが基調講演を行ったシンポジウムのことを報告しておく。パリに着いた翌日、滅多に行かないシャンゼリゼ大通り、そこに面したルイ・ヴィトンの旗艦店の階上に数十名しか入れないホールがあってそこでL’humain débordé IIIのシンポジウムが開かれた。「人間からのはみ出し」とでも訳そうか、一昨年の12月にパリ第1大学で第1回、わたしは行けなかったが去年も6月に第2回目、今度が3回目で、じつはこの6月には東京で開くことがきまっている。ENS(高等師範学校)のドミニック・レステルさんとパリ第1大学のマリオン・ラヴァル=ジャンテさんとわたしがはじめからのオーガナイザーで、機械/動物/幽霊(それに、/神を加えてもいいかもしれない)という人間と非人間との境界領域へのアプローチを議論する連続シンポジウム。今回はこのルイ・ヴィトンの建物内の美術館スペースでマリオンさんも出品した「見えない存在を観察する」というタイトルの展覧会が開かれていて、その関連シンポジウムという位置づけだった。基調講演がドミニックさんとわたし。ドミニックさんは、3人称ではなく、2人称のアプローチというかれの動物の哲学の方法論について。その後に、わたしは、やはり日本から来たのだからと、佐々木宏幹さんの研究をベースに日本、とくに沖縄におけるシャーマニズムの事象への研究を紹介したあとで、今年のわたし自身の研究テーマでもある「4の理論」について、ハミルトンの四元数Quaternionを応用するというアイデアを披露。ある種のカオス的理性による統合的人間科学の可能性という希望を語らせてもらった。前日フライトのなかでとったメモをもとにしただけのほぼ即興の講演だったが、発表者のなかに物理学者や化学者がいて多少の応答はあった。多くの聴衆にはなかなか伝わらなかったのかもしれないけれど。しかしシャンゼリゼで講演するなんて、Aux Champs-Élysées!.............

 ★今日、4月7日は、雑誌『文藝』(河出書房新社)の発売日。特集が「人文書入門」なのだが、そこで「世界と出会うための読書案内」と題して、大澤真幸さんと結構、濃密な対談を行っています。しかしもう一本対談があってそちらは、いとうせいこう×千葉雅也「装置としての人文書」。われわれも写真を撮られたのに、表紙は千葉さんたちの写真にもってかれました。かように世代交替は進む。それもまたよしかな。大澤さんとの対談は明日も続行の予定。いつか小さな本ができるかもしれません。

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