時の彩り(ラスト・ラン) 151
2014.04.01
小林康夫
2年前にグローバルCOEが終了したときに、1年間サバティカルをいただいて、そのままパリに旅立ったこともあって、ブログを中断しましたが、この春、わたしの定年までちょうどあと1年というこのタイミングで、ブログを再開することにしました。
以前は、基本的には、UTCPの活動を中心にして報告を書いていましたが、これからはもう少し自由に、週1回程度のペースで、「つれづれ、草」をアップしてみようと思っています。まあ、face book もtwitterもやらないわたしですので、この時代、間歇的な個人的発信を試してみるという計画です。
この3月も激しい早春でした。3月1日に立教大学でマルグリット・デュラスをめぐる国際シンポジウム。その翌日に郡山の「福島復興心理・教育臨床センター」で行われた「福島・希望の大学」計画をめぐる討論会に出席。中旬以降は、パリに飛び、まずシャンゼリゼのエスパース・ルイ・ヴィトンで行われたL'Humain débordé (III)のシンポジウムで基調講演(といってもテクストなしの即興講演でしたが)、さらにはパリ第8大学との共催で「Et」をテーマにした博士課程学生による発表集会を2日間にわたって運営。その他、さまざまな打ち合わせと出会いの嵐をくぐり抜けて帰国。感動的な出来事もたくさんあったのですが、そのうちのひとつがこれです。
パリのオデオンのレストランーーそこは去年の秋、わたしがパリ第8大学の先生方を招いて学生シンポジウムの共同開催をお願いしたところだったのですがーーでの打ち上げのパーティをもって「Et」シンポジウムも無事に終わった翌日、今度は現在計画中の展覧会がらみの調査でモンパルナスの石版工房を訪れようと、展覧会のテーマであるジャコメッティも通っていたLa Coupoleの前を通ると、ガラス戸の向こうに見知った顔が!なんと北京大学の仏文科の主任教授で、わたしの(もちろん血がつながっていない)「弟」分の菫・強(ドン・キャン)教授が悠然と朝食中。なにしろ昨年は、プルーストの国際会議にわざわざプルースト研究者でもないわたしを招聘してくれた熱い友情の関係、こんなところでなにやってる?と驚きながら、肩を抱きあった次第。かれは、その週末開かれていた「Salon du livre」(国際書籍フェア)で講演をするために、また中国の国家主席の訪仏に合わせたさまざまなイベントに出席するために、その日の朝、北京から着いたばかりと。パリの街路では、友情は出会いを演出する。翌日、わたしは帰国の飛行機に乗らなければならなかったのだが、その時間を割いて、リュクサンブール公園近くのレストランでかれとランチをとり、いっしょにポルト・ド・ヴェルサイユの「Salon du livre」へ。ゴンクール賞やかれが審査委員長をやっている中国のフランス文学翻訳賞を話題にしたかれのトークを聞くことができた。そうしたら、そこに顔を出したのが、コレージュ・ド・フランス教授のアンヌ・チェン教授。一昨年にわたしをコレージュに招いてくれた先生だが、今回は時間がなくてお会いできないなあ、と心残りだったのが、さすがにディナーにおつきあいする時間はなかったが、ちゃんと挨拶ができた。大学の「教養学部報」に「とうとうパリに到着した!」という記事を昨年書いたところだったけど、そのとおり、ほんとうに「到着」した者をパリはいつまでもそのような者として遇してくれる。