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【報告】第5回沖縄研究会

2014.04.03 崎濱紗奈

2014年3月14日、第5回UTCP沖縄研究会が開催された。研究会は二部構成で、第一部では堀川直子氏による研究発表、第二部では崎濱紗奈が輪読発表を行った。

堀川氏は「次世代沖縄系日系人のエスニックアイデンティティの様相――人類学的アプローチから」というタイトルで発表を行った。冒頭でエスニシティをめぐるステュアート・ホールらの理論を概観したことは、「エスニックアイデンティティ」という言葉になじまない参加者にとって大きな助けとなった。報告内容はタイトルの通り、一世以降の沖縄系日系人におけるエスニックアイデンティティに対して考察を加えるというものであった。堀川氏の調査の特徴は、移民先のブラジルやアルゼンチン在住の方々にではなく、沖縄・神奈川・群馬をフィールドとして、日本への再移住者を対象にインタビューを行ったことである。さらに堀川氏は、日本本土と沖縄を分けてとらえることによって、帰国後の居住地によってエスニックアイデンティティがどのように変容するかについて検討を加えた。

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調査の結果堀川氏は、群馬・神奈川在住の沖縄系日系人におけるエスニックアイデンティティは次の三つに分類することができると結論づけた。1.ナショナルアイデンティティ:ブラジル人、アルゼンチン人、2.複数のアイデンティティ:半分はブラジル人、半分は日本人、3.日系人:ブラジル人でもなく日本人でもない日系人そのもの、というのがその三分類である。一方、沖縄在住の沖縄系日系人の語るエスニックアイデンティティは、1.ナショナルアイデンティティ:ブラジル人、ペルー人、アルゼンチン人、2.複数のアイデンティティ:半分アルゼンチン人、半分ウチナーンチュ、3.あいまいで移りゆくアイデンティティ、という三つに分類される。発表では、「ウチナーンチュ」アイデンティティの有無・濃淡が本土在住者と沖縄在住者の間で異なることなども指摘された。

発表後の質疑応答では活発な議論が交わされた。再移住者のエスニックアイデンティティの「変容」をより深く考察するために、在ブラジル・在アルゼンチンの沖縄系日系人を対象にしたインタビューを行うとよいのではないか、という指摘等がなされた。

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第二部の輪読では、折口信夫「国文学の発生(第三稿)――まれびとの意義」」を扱った。「国文学の発生」第三稿では、「折口学」の真髄とも言える「まれびと」論の輪郭が明らかにされる。発表では内容を概観した上で、近代国学と沖縄学の関係について言及した。折口が「まれびと」論の形成にあたって、沖縄調査から大きな示唆を受けたことはしばしば指摘される。また、「沖縄学の父」と呼ばれる伊波普猷が折口から多大な影響を受けたことも明らかである。しかし、「折口学」と「伊波学」、ひいては近代国学と沖縄学の相互影響関係についてこれまで十分な議論が尽くされてきたとは言い難い。「復帰」から42年の今、「沖縄」と「日本」の間に横たわる「一大塹濠」を直視するとき、伊波普猷の提起した問題を再考する必要があるならば、伊波のみに焦点を絞るのではなく、折口信夫、柳田国男という近代国学の巨人たちとの間に形成されたトライアングルに注目する必要があるだろう。「日本」という主体が形成されるにあたり「沖縄」が召喚されたこと、あるいは、「日本」に召喚されることによって「沖縄」という主体の形成が可能だったこと、これらの問題を考察することを今後の目標としたい。

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