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【報告】第8回BESETO哲学会議

2013.10.28 石原孝二, 川村覚文, 高崎麻菜

2013年10月12日、北京大学にて第八回BESETO哲学会議が開催されました。同会議は、北京大学、ソウル大学、東京大学の三大学が共同で開催する、主に大学院生などの若手研究者の交流を目的としたカンファレンスであり、年に一回各大学持ち回りで開催されています。

今回、東京大学大学院総合文化研究科からは、4名の大学院生が参加しました。以下に、参加した教員・研究員・大学院生からの報告を掲載します。
(ここまで川村)

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石原孝二(UTCP/東京大学大学院総合文化研究科准教授)

北京大学で開催されたBESETO大会に参加してきた。2007年2月に北京大学、ソウル国立大学、東京大学の哲学関係の教員・院生の間で始まったこの会議も今回で8回目となった。今回は北京の空気の悪さや、スケジュールの変更など必ずしも順調にいったとは言えない面もあったが、ともかくもこの会議が続けられたことに対して、ホスト側の北京大学関係者に感謝したい。特に ホスト側のSong Wang先生には、会場の手配やスケジュール調整などで大変な労力をかけて会議をご準備いただき、深く感謝している。私自身は都合によりすべての日程に参加することができなかったが、北京大学、ソウル国立大学や本郷の哲学研究室、UTCPの若手教員・研究員の発表を聞きながら、BESETOの担い手も世代交代が進んでいるという印象を受けた。来年度の第9回は駒場がホストになることが決まっている。(現在のところ、来年10月に開催予定。)BESETOは院生などの若手研究者にに発表の場を与え、また、若手研究者同士の交流を促進することを主要な目的としたものである。こうした研究発表・交流の場を継続させるべく、駒場での会議の準備を進めていくことにしたい。(石原孝二)

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飯塚理恵(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻修士課程)

発表タイトル:Contemporary Problems with Virtue: An Intellectual Point of View

今回のBESETOは私にとって初めての参加だった。学会では様々な分野の研究を垣間みることができ、とても刺激的な時間を過ごすことができた。特に、北京大学のLi先生は認識論の専門家で、共通の関心分野を持つ私に多くのアドバイスを与えてくれた。BESETOの発表に慣れているメンバーの発表は非常に明快・明晰でどの国の人も積極的に質問していたが、私の発表では活発な議論にならなかったことが残念だ。私は徳認識論と性格特性に関する近年の経験科学的成果の関係性について発表したが、知名度の低いテーマだったこともありすぐに問題を把握しにくかったようだ。学会後に内容に関する質問を個人的にいただいた。次回は発表内容の伝わり易さを心がけ、より多くの意見を引き出せるよう努めたい。コミュニケーションの齟齬から学会の進行が乱れてしまったことがあったので、次回以降では円滑な進行が課題だと思う。しかし、終始和やかなムードで学会を終える事ができ、非常に嬉しく思う。4日間を通し北京大学のメンバーが献身的にお世話をしてくれたことにとても感謝している。来年は私の所属するキャンパスでBESETOが開催されるので、是非また参加して恩返しをしたいと思う。(飯塚理恵)

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イヴァ・ゲオルギエヴァ(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)

発表タイトル:Problems of soldiers’ post-traumatic stress disorder (PTSD) and the alternative treatment method of cybertherapy (CT)

This is my first participation in the BESETO conference. My presentation introduced alternative reasoning for the PTSD onset among soldiers, which explains the onset with the soldiers' vulenrability as character trait, regardless of the moral dilemma of killing in war and its justification. Considering this, the presentation was introducing a somewhat distant problems in the context of the other presentations at the same session. Still, I did receive helpful feedback and one of the questions concerned a very current problem: the usage of virtual environments for disaster preparedness and prevention of PTSD onset. My overall impression of the presentations was very good and I enjoyed attending each one of them, as well as their discussions continuing outside the auditoriums. I believe we had a great chance to communicate a lot with the professors and the graduate students from the other universities and this enriched our experience and deepened the understanding of our own research.(Iva Georgieva)

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鈴木雄大(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)

発表タイトル:Three Positions on Reason for Action in Analogy with Perception

私にとっては今回で3回目のBESETOへの参加となりました。最初はなかなか交じり合いにくい中韓日の学生も、いつも通り日が経つにつれて交流が深まり、会が終わってからも互いの研究状況を確認し合えるような関係を築き上げることができました。私の発表内容は分析哲学における行為論に関するものでしたが、分析系行為論に関する発表は他になく、アジアにおいてまだ行為論の研究は膾炙していないのではないかと感じました。それでも多くの人々から質疑を受け、議論に発展し、その中には私の研究をインスパイアしてくれるものも含まれていました。内容的な収穫以外に、そもそも国際的な場での研究発表の機会をもつことは、日本にいると縮こまりがちになってしまう研究態度に刺激を与えてくれるものです。私にとってBESETOは、そのような貴重な機会を与えてくれる恵まれた場所であります。(鈴木雄大)

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高崎麻菜(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)

発表タイトル:The Analysis of tojisha-kenkyu: Toward a Phenomenological Community

今回、初めてBESETOに参加し、統合失調症の当事者研究について発表を行いました。具体的には、現象学的精神医学の分野で行われてきた先行研究の批判を踏まえながら、精神疾患概念を再検討する上での意義について考察しました。英語の発表には不慣れで大変緊張しましたが、発表の後には有意義な質問をもらい、今後の研究の参考になりました。さらに、その後の夕食の時にも意見や感想をもらうことができて、研究の大きなモチベーションにもなりました。北京大学とソウル大学の若手研究者の人と交流できたことは大変良い機会でした。一口に哲学といってもいろいろな分野の若手研究者が集まるので、彼/彼女らの研究内容を教えてもらうことは刺激的で、自分の研究とつながりそうだと思う人とは積極的に話しました。また、交流する中で、日々の研究の悩みはどの大学の学生も同じなのだなと親近感を感じました。今回知り合えた機会を無駄にせず、連絡を取り合い切磋琢磨していきたいです。
発表の翌日に体調を大きく崩してしまい、たくさんの方にご迷惑をおかけしてしまったことをこの場を借りてお詫びいたします。次回参加する機会があれば、体調は万全を維持するよう心がけます。最後になりましたが、今哲学会議のための事前準備や会議期間中の案内のために走り回ってくれた北京大学の先生やスタッフの方たちに心から感謝します。ありがとうございました。(高崎麻菜)

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川村覚文(UTCP)

発表タイトル:Publicness and Religion in Japanese Context: Return of State Shintoism?

今回、第八回目となるBESETOにスタッフとして参加する貴重な機会に恵まれた。色々なことが日本のマスメディアでは騒がれている昨今の北京だが、今回の会議では、ホスト校である北京大学スタッフによる温かいおもてなしや、フランクだけれど親切な地元の人々との交渉などを通じて、メディアによって曇らされていない北京の姿に少しでも触れることができたのではないかと思う。

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私の発表は、昨今議論される機会が多くなってきた「宗教と公共性」に関してのものであった。東日本大震災以降、宗教団体や宗教者によるボランティア活動が盛んとなり、それに伴って宗教の公共性を巡る議論が、注目され始めてきた。しかし、宗教の公共性を言祝ぐ議論には、様々な問題が胚胎しており、例えば「公共」という言葉に関して、信者集団あるいはせいぜい国民といった、閉じられた共同性を示すものとして理解されていたりしている。特に神道と公共性を巡っては、戦前の国家神道の問題を無視するかのような議論も見られ、本発表では、以上の危険性について批判的かつ理論的に考察した。発表後、フロアからいくつかの質問があがり、また休憩時間中にも個人的に質問してくれる人などもいて、大変有意義な経験となった。
最終的には、今回のBESETOも無事に終わったことに関し、北京大学哲学・宗教系の方々に対して感謝を申し上げたい。特に、様々な制約の中ご尽力いただいた王颂先生には、心よりお礼を申し上げたい。また、来年度のBESETOは駒場キャンパスで開催予定であり、今回での経験を活かしつつ、準備を進めていければと思う。(川村覚文)

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