【報告】第二回 沖縄研究会開催
2013年6月7日、東京大学駒場キャンパス101号館研修室で、第二回沖縄研究会が開催され、海外からの留学生も含めて10名が参集した。
今回の研究発表は、崎濱紗奈さんによる「「沖縄」アイデンティティ形成史―伊波普猷の「同化」と新川明の「異化」」が行われた。〈沖縄学の父〉と呼ばれる伊波普猷と、現代の詩人・ジャーナリスト・思想家の新川明とを、「同化」と「異化」という視点から対比し紐解いていった。新川の思想の変遷をたどりながら、それぞれのタームに展開された新川の思想的背景を丹念に調査し、「反復帰」論から「異族」論、そして「独立」論へと展開していく過程を文献資料などから確認し、後半の「同化」と「異化」の問題へと発表は進んだ。
「伊波の日琉同祖論は、新川が指摘するように、日本と琉球・沖縄の同祖性を示すために主張された側面も勿論あるが、そのような明確な目的意識を伴わない形でなされた言語学・民俗学研究が、結果として「日本」という帝国の主体の発生源に「沖縄」という要素を滑り込ませた側面もあるのではないか。しかし一方で、これらの言説と、日本という国家が戦争へ突き進んでいった時代背景とが全く無縁であると言い切ることも不可能である。伊波の「日琉同祖論」については、新川が指摘するように沖縄における皇民化教育を下支えしたことは否めない。この両面を踏まえた上での伊波普猷批判が今必要とされているのではないか」と結んだ。
そして最後に、沖縄学と近代国学は、それぞれが互いに大きな影響を及ぼし合って成立してきた背景を持ち、新川の「異族」論でさえその扱いを間違えれば、沖縄における国粋主義的言説を下支えしてしまいかねないことを危惧し発表を終えた。
今回から始まった輪読では、折口信夫の『国文学の発生』をテキストとして、研究発表と同じく崎濱紗奈さんによって「第一稿」の発表が行われた。折口は柳田国男のすすめもあって、三度にわたる琉球採訪を行い、「まれびと」論着想の大きな手掛かりとなった。『国文学の発生』は、沖縄研究を深めていく上で重要な位置を占める文献であることから、今後継続して輪読が行われる。
次回の沖縄研究会は、9月6日(金)午後6時30分から東京大学駒場キャンパス101号館研修室で行われる。研究発表は吉田直子さん、輪読は折口信夫『国文学の発生』「第二稿」。
参加希望の方はezu06552 [at] nifty.com(内藤久義[UTCP])までご連絡ください。
(報告:内藤久義)