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【報告】P4C in Hawaii 見学(4)

2013.04.02 神戸和佳子, 崎濱紗奈, 榊原健太郎, Philosophy for Everyone

引き続き、P4C in Hawaii 見学におけるワイキキ小学校へ訪問について榊原健太郎がお伝えします。

【3月6日 ワイキキ小学校】(2)

次に見たのは、2年生のクラスである。私たちは二つの教室に分かれてP4Cを体験した。

(クラス1) 「一番強い武術は何か」という問いについてP4Cスタイルで話し合った。「柔道」、「空手」、「カンフー」、「ボクシング」という意見が出た。柔道や空手が「強い」理由は、「ディフンスができるから」だ。こうした意見に対して、「強いってどういうこと?」「大事な人を守れることだ」「Martin Luther Kingはなぜすごいことができたか」「 strong でありsmartであり kindであったからだ」。こうしたやるとりを受け、「その(strong ,smart, kind)うちのどれがいちばん大切だと思うか」という問いにコミュニティの関心が集中していった。「 smart = 判断する( judge )力、 I can know what to do」「 kind =他の人への影響力がある」といった意味づけを生徒が行う。生徒たちからは strong への言及が少ない。全体としてはsmart 支持者が多かった。穏やかな様子の女子生徒がkindを支持していた。
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<“コミュニティボール”を持ったひとに集まるコミュニティの関心>

(クラス2)このクラスは「もしお金が降ってきたらキミはどうする?」という問いをめぐってP4Cスタイルで話し合った。「旅行する」「好きなもの買う」「お菓子食べる」「でもコインだよ?」「車がぼこぼこになっちゃうから心配、直したら降ってきた分を足しても足りないかも」「ケガするから危ない」「お金は綺麗じゃないっておばあちゃんが言ってた」「でもバケツ置いておけばOK!」「えーうるさいじゃん」「巨大な磁石を買う!そうすればコインがくっついて勝手に集まってくる」と生徒たちのアイデアがあふれ出す。ここでBenさんが「最初はお金ってすごくいいと思ってたけど、本当に降ってきたらお金の意味が変わるかもしれないね。またお金かぁ…って思うかも」と発言し、クラス全体が一時的にこの発言を受け止める雰囲気につつまれる。授業の終了時間が近づき、担任の女性の先生が「何かほかに思いつくことあれば言ってみてね」とうながすと、「どうやったら実際にお金って降ってくるの?」という意見が生徒から出て、多くの生徒の共感や笑いを誘う。今日のP4Cについての一人ひとりの自己評価を「人の話をきちんと聴くことができましたか」「自分の言いたいことを言えたと思いますか」「このP4Cの時間をたのしく過ごせたと思いますか」といった点について全員で表明し合って授業は終了した。
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<「もしお金が降ってきたらキミはどうする?」>

2年生のP4C にはいくつか特徴がある。まず、担任の先生(ファシリテーター)の役割だ。2年生クラスにおける先生のファシリテーターとしての役割は、生徒たちが互いに活発な発言をすることを可能にする知的に安全な空間を整えることにあったと見てよいだろう。そうした安全な空間が機能しさえしていれば、2年生の(あるいは低学年の)生徒たちは意見を表明することに躊躇を覚えることは少ない。しかし、コミュニティボールを持った人が話している最中に騒がしくする生徒に対して「ねえ○○さん、いま誰が話しているの?」と直ちに問いかけ、またP4Cサークルの形状を乱すほどに体勢が崩れていたり寝そべったりし始めた生徒には、「いま、何の時間?(P4Cの時間よね)」と、キッパリとした姿勢を示していた。このあたりは、低学年向けP4Cのファシリテーションの基本であると主張しているように、見て取ることができた。しかしそんな先生も、生徒の発言が面白いと感じた時などにはたくさん笑うし、手もたたくし、足踏みさえする。なによりP4Cの時間を楽しそうに過ごしているのだ。そうやって、P4Cの良さを小さな子どもたちに学ばせているのだろう。素敵だ。
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<“COLOR ME MINDFUL”ワイキキ小2012-2013の標語>

昼食をはさみ、午後は4年生のP4Cクラスを見学した。テーマは「この学校(ワイキキ小)で好きなところはなにか」だった。「先生が優しい」「先生がどならない」「先生が助けてくれる」「庭が素敵」と生徒の意見があがる。この「庭が素敵」という意見を土台として、「学校が生徒をつくるのか、生徒が学校を作るのか」というテーマに問いが動き(深まり)、コミュニティの関心がこの問いへの応答に集まって行く。「生徒が学校をつくる」を支持する生徒は、「だって生徒が学校の主役だとおもうから」と理由づける。「学校が生徒をつくる」を支持する生徒は、「学校が生徒をつくる。でも学校が生徒の性格まで影響をおよぼすのはおもしろくない。だって、学校にいるときと家にいるとき全然性格が違うんだもん」。と、なぜが、(学校にいるときはお利口さんで家にいるときはそうでもない)兄弟への愚痴(?!)こぼす。しかし、この発言が生徒たちにウける。(この発言が含むリアルな感じが、4年生あたりには(にも)面白く感じられるにちがいない)。問いはさらに「兄弟も、自分も、学校と家とで人格が変わる?」へ動き、「変わるかもしれない。家での方がちゃんとしている」「いや学校の方がちゃんとしている」など意見が出る。そして(ついに)「どれが本当の自分なのか?そのうちのどれかが本当の自分なのか?」という問いのかたちに。「どれか一つが“本当”とかじゃないけど。自分にいろんなあり方 (personality) がある。使い分けというより、自然にそうなっちゃう」。といった意見が出たところでタイムアップ。4年生にもなると、P4Cの時間の中に自分の関心のある場所を探し出すための工夫ができる様になるのかもしれない。そんなふうに感じた瞬間が、このクラスではいくどか訪れた。
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<授業中の様子>
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<このクラスの時間割表、水曜3時限目に“P4C”>

以上が、ワイキキ小学校のP4C見学の報告である。
報告の最後に、ワイキキ小学校の“職員会議”のスナップを。見学当日の放課後に図書館で行われた(会場が図書館というのもイイ)職員会議にTabor校長先生のお計らいで私たちも加えて頂いた。今日のよかったこと、残念だったことを教員全員で共有する大切な場だ。「マインドフル「イマジネーション」「反応・応答できる姿勢づくり」といったキーワードを中心に話し合われた。そして生徒たちはもちろん教員たちもこうしたことを心にどどめていこうと確認するあたりがポイントである。
ワイキキ小学校では職員会議もP4C!
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<職員会議の様子>

―続く―

(榊原健太郎)

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