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梶谷真司「邂逅の記録29:当事者として共生する場」

2012.12.06 梶谷真司

 11月29日と30日、「当事者研究の現象学」のイベントとして、北海道浦河の「べてるの家」の人たちを招いての討論会・交流会が行われた。他にも引きこもりや鬱、何らかの依存症やリストカットなど、さまざまな当事者が集まって、活発に意見交換をしていた。そこで感じたのは、話すこと、聞くこと、つながること、その安心感、そうやって自分と世界を受け入れることの大切さである。それは、何かの障害を持った人たちだけではなく、きっとすべての人にとって必要なことだろう。彼らが生きている試みは、周縁で起きていることかもしれないが、むしろ先駆的な挑戦であり、いずれ私たちが求めるものになっていくにちがいない。

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 ただ、それは対話やコミュニケーションの個別のメソッドやノウハウではない。むしろ重要なのは「場」の力であろう。実際に語り、聞くことよりそれを許容する(時に拒絶も許す)場、そうした空間と時間を開くこと、そこで悩み、苦しみ、喜ぶこと、そうして自らが当事者として生を分かち合うこと──彼らから受け取るべき恵みは、彼らが突き付けてくる問いと同じく大きい。

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