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【報告】白永瑞講演会「制度を横断する学問の(不)可能性」

2012.10.27 中島隆博, 文景楠

2012年10月24日、東京大学駒場キャンパスにて白永瑞教授(延世大学校国学研究院長)による講演会「制度を横断する学問の(不)可能性:韓国HK(Humanities Korea)の事例」が開催された。

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白教授は韓国における大規模人文学支援事業であるHKの延世大学校における研究拠点の責任者であり、今回の講演はこのHK事業についての紹介を主題とするものとなった。白教授は、まずHKという事業がどのようなビジョンのもと推進されているのかに関する見取り図を示された。日本における類似した事業との対比を念頭に置きながら明快な説明がなされた後、話題は白教授が担当されているHK事業である「21世紀実学としての社会人文学」に移った。白教授は、まずこの社会人文学という発想が延世大学校国学研究院の伝統を引きついでいるということを強調された後、これが単なる社会「学」と人文学との融合を目指すものではなく、現場としての社会と人文学を直接つなぐ試みであると述べられた。

発表に対して、大学の思想的・実務的動力源として同じ悩みと向き合っている東京大学の教員からの質問が相次いだ。質問は、大学と国家との関係に関するものから、韓国において人文学は具体的に社会とどのように関わっているのかという点まで多岐に渡った。これらの質問に対して、白教授と、ともに来日してくださった金杭HK教授(延世大学国学研究院)は、韓国の大学が実際に成し得たものと未だ成し得ていないものを丁寧に説明しながら答えて下さった。

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白教授による韓国の人文学の現状に関する報告は、非常に温和なトーンでなされたが大変熱のこもったものであり、自身の悩みをも包み隠さない真摯なものだった。結果的に、今回の講演は、制度的な支援や社会とのつながりの大事さとともに、人文学においてはやはり自らをその(不)可能性に常に晒し続けるという営みこそが枯れることのない力の源となりうるということを如実に示すものとなった。

(報告:文景楠)

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