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梶谷真司「邂逅の記録11:ハワイ大学との共同夏季比較思想セミナー報告(2)」

2012.09.01 梶谷真司

《無事到着、無事以上のスタート》

7月29日(日)

 今回のハワイ大学との共同夏季セミナーへ参加した東大の大学院生は、駒場キャンパスからRAの文景楠君、修士課程の高山花子さん、崎濱紗奈さん、中国からの留学生の芮雪さん、本郷キャンパスからは博士課程の神戸和佳子さん、田村未希さん、川瀬和也君の計7人となった。準備講習も2回行い、学生自身による自主的な勉強会では、各講師が提示した参考文献を読んで、英語で議論をするという準備を行っていた。渡航前から並々ならぬ意欲が感じられ、連れていく私たちとしても心強い。

 中島先生と私は、準備もあって先にハワイ入りしていたが、学生たちもセミナー開始の前日であるこの29日にやってきた。フライトが2時間ほど遅れたが、全員無事到着。11時半にキャンパス内のゲストハウス、リンカーン・ホールで彼らに会った。二人ほどあまり眠れず疲れているという学生もいたが、みないたって快活で、明日からのセミナーに向けて気力も充実している感じであった。そのあとは中島先生が、滞在中借りている家に行き、奥さんが作ってくださった昼食をごちそうになった。

 若さに期待することができる、諦めるのでもなく、嘆くのでもなく、期待できるというのは、このような年齢、このような立場でこそ味わえる特権であろう。しかもそれは、今までの経験に照らして言えば、実際に裏切られることは、あまりないのだ。私としても、今だからできることが何かを考え、力を尽くしたい。

7月30日(月)

 セミナー初日。最初の顔合わせということもあり、セミナー開始の30分前、朝8時半に集合。コーヒーとパンが出された。9時には全員が集まり、石田先生によるIntroductionが始まった。まずこの夏季セミナーを企画した経緯、意義の説明があった。そのあと、講師である私たちの自己紹介に続き、学生たちが順次自己紹介をした。意外なことに、数人の大学教員もいた。それ以外は学生だが、とにかくいろんなところから、いろんなバックグラウンドを持った人が来ていた。それでもアジア、中国、日本への強い関心という共通点がある。英語ネイティヴは半数強で、他は中国や韓国、日本の出身者(大半は留学生)と東大からの参加者で、バランスとしてもとてもいいように思われた。

 続いて中島先生が「思想の比較とは何か」という、このセミナー全体の趣旨を語った。思想どうしを比較し、突き合わせることで、それぞれの前提についてより深い理解が得られ、それまでとは違った視点から捉えることができるようになる――そういう比較思想研究のポテンシャルが強調された。

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 そのあと、セミナー・ルームのすぐ外にハワイアン・ランチが用意され、昼食をとりながら歓談。午後のセッションは、ハワイ大学の中国哲学の専門家Roger Ames先生の講義であった。儒教の全体的特徴としてOrdinary(親子の情愛など)なものをExtraordinaryなものとして捉えるというのは、非常に新鮮であると同時に、哲学として古今東西に共通する視点だと感じた。さらに、翻訳という問題を通して、彼もまた比較思想の意義を説明した。それは、一つの概念を別の言葉に移す時に生じるズレから、かえって、それぞれの言語、思考様式の前提、特徴が浮かび上がり、より自覚的になるということ、また、そうして固有性の限定を超えて、より普遍的な意義を考えることだという。そのあと、とくに「友(友情)」を事例として、孔子(『論語』)とプラトン、アリストテレスを比較しつつ、中国思想の特徴について議論がなされた。

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 ハワイ大学のエイムズ先生、石田先生、その他のスタッフのおかげで、セミナーは無事以上の素晴らしいスタートをした。

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