梶谷真司「邂逅の記録10:ハワイ大学との共同夏季比較思想セミナー報告(1)」
《新たな挑戦に向けて》
この比較思想セミナーは、UTCPとハワイ大学のEast-West Centerの共同で、7月30日から8月17日までの計3週間のプログラムとして開催された。講師を務めたのは、ハワイ大学からロジャー・エイムズ教授と石田正人准教授、東京大学から中島隆博准教授と私である。またUTCPのセンター長、小林康夫教授による特別レクチャーも行われた。
このセミナーの目的は、変動の激しい現代のグローバル社会のなかで、自らの文化・思想伝統に立脚しつつ、異文化との対話に貢献しうる資質をもつ若い研究者を養成することにある。そこで比較思想研究の世界的拠点の一つであるハワイ大学の哲学科と共同で、日米の若い世代の学生を一緒に育てるべく構想した。これは「共生」をテーマとするUTCPでは、「東西哲学の対話的実践」というプロジェクトのなかに位置づけられ、その最初の大きな企画としての意味をもつ。
全体のテーマは、西洋と東洋の思想を様々な角度から対比し、それぞれの特徴を考え、新たな思考の可能性を探ること、と言っていいだろう。そこでエイムズ・中島両先生が儒家と道家を中心に中国思想を論じ、石田先生は西田哲学の純粋経験を、私は医療における心身問題と養生思想を取り上げることになった。うまくかみ合うのか、あるいは、かみ合わなくてもいいのか、参加者の関心に応えられるのか、どんな効果があるのか・・・何も分からないまま、若干の不安と大いなる期待をもってセミナーを迎えた。この記念すべきイベント――いったいどうなったのか。これから14回に分けて報告していこう。
【謝意】
UTCPの活動は、今年度より上廣財団により支援されているが、今回のセミナーのために、さらに特別に追加援助をいただいた。また同財団は、UTCP以前からハワイ大学の哲学研究の支援もしており、この共同セミナーのみならず、両大学のパートナーシップそのものをバックアップしてくださっている。報告を始めるにあたり、まずは上廣倫理財団に深謝したい。