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梶谷真司「邂逅の記録2:国際哲学オリンピック2012 オスロ大会 視察報告(1)」

2012.06.15 梶谷真司

 去る5月15日(火)から20日(日)まで、「国際哲学オリンピック(IPO:International Philosophy Olympiad)」なるものを視察するため、ノルウェーのオスロへ行ってきた。新生UTCPが上廣倫理財団から支援を受けるにあたり、IPO参加事業への協力を求められ、「これは面白そうだ」という、当初はかなり漠然とした期待感から、私がメインで関わることになった。UTCPの新メンバーとしての私にとっては、最初の仕事でもある。

 さて、実際行ってみると、期待以上のものがあった。面白さも、大変さも、やりがいも、継続性も、将来的な規模も、そして責任も、何もかもが予想以上だった。これから順次、今回の視察の報告をしていくとしよう。その前にまずはIPO、およびそのUTCPとの関わりについて述べておく。

IPOとUTCP

 国際哲学オリンピックは、高校生のための哲学エッセイコンテストで、1993年に6カ国の代表有志によってスタートし、それ以来、年に一度5月に国際大会を開催している。国際哲学協会連盟(Fédération Internationale des Sociétés de Philosophie, FISP)が後援、ユネスコが協賛している。出場者は、直前に哲学者の言葉が4つ与えられ、その中から一つを選んで、それに関連するエッセイを書く。制限時間は4時間で、母語以外の英独仏のいずれかの言語で書き、審査員が匿名で評価し、金銀銅、および佳作が決定される。今年はノルウェーのオスロで開かれ、参加国は歴代最多の39カ国であった(詳しくは→ http://ipo2012.no/のCountries)。日本は2001年にアメリカ・フィラデルフィアで行われた第9回大会から参加している。

20120614_IPO01.jpg

 今回私は、IPOに参加する日本代表団にUTCPのメンバーとして同行することになったが、まずはこの間の経緯について説明しておきたい。IPOへの日本の参加は、同志社大学名誉教授・敬和学園大学学長の北垣宗治先生が同僚の延原時行先生と一緒に2001年に始め、続けてこられた。もともとは延原先生がアメリカで開催された哲学の国際会議で、アメリカの人からIPOに誘われたのが始まりだったらしい。

 以来、事務局も敬和学園に置かれ、日本の組織委員会は北垣先生と延原先生、数年たって立命館大学講師の林貴啓先生が加わり、長らくこの3人で運営してこられた。国内選考の審査から大会出場までの準備、高校生の指導に至るまで、北垣先生が中心になってなさってきた。また、加盟の翌年の2002年には、IPOの要望を受けて、第10回大会が東京で開かれたが、そのさい資金の調達のためにも奔走なさったと聞く。これらすべてが個人的な熱意と努力によって10年以上続けられてきたというのは、感嘆の念を禁じえない。先生方には心から敬意と謝意を表したい。

(続く)

(梶谷真司)

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