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時の彩り(つれづれ、草) 147

2012.03.30 小林康夫

グローバルCOE終了
 ブログを書かなくてはと思いながらはたせず、気がつくと3月ももう終わり。

この25日から27日まで、韓国とドイツからの先生もごいっしょにメンバー9名で南三陸・気仙沼・仙台とまわってきて、そのままグローバルCOEとしてのUTCPの修了式。時間がないので簡単な報告だけでしたが、わたしとしては、このUTCPの10年間がなによりも「人」のつながりをつくることにあったことを強調させてもらいました。共同研究というのではありません。COEの成果として、ただ分厚いだけの論文集をつくるなどということは、わたしは少しも考えなかった(やろうと思えば簡単だったのですが)。そうではなくて、研究はそれぞれの個人の責任。だが、人文科学の分野において国際的な「人のつながり」をつくるその活動のためにこそ、この資金を使わせていただくというのがわたしの変わらない「心」でした。それがこの資金の本来の趣旨であったとわたしは考えています。

ある書類にわたしが書いた文章からの引用————「わたしは倫理の基礎は人だと確信しています。そして人の中心は信であると、これもまた確信しています。そして大学における知も、実は、その人としての信の実践にほかならない、と確信しています。そしてそれらの人とは、抽象的な人間一般などではなく、具体的で、顔をもった、その意味で人生というものを背負ったひとりの人である、とこれも強く確信しているのです」。

人文科学は、時空を超えて、また時空を共有して、人との対話です。深さにおける対話です。そのような対話を行うことができる開けをみずからのうちに育てることが人文科学の研究者の使命です。そのためには人と出会うことがなければなりません。そして出会うためには場が必要です。UTCPの活動はその場を作り出すこと以外のものではありませんでした。場は生まれ、多くの出会いがあり、多くの人が育っていきました。

27日の修了式に続いて、研究科長室で、上廣倫理財団と総合文化研究科のあいだに寄付研究部門設立に関する覚書の調印式がありました。UTCPのこれまでの活動を評価してくださり、この場が消えてしまうことを惜しんでくださった上廣倫理財団の支援のおかげで、規模は縮小を余儀なくされるとはいえ、UTCPの活動を今後も継続していく体制が可能になりました。この新しいUTCPは6月1日をもってスタートすることになっています。それまでの二ヶ月の間は経過期間です。オフィスは維持されていますが、いったんの「中間休止」をおゆるしいただきたいと思います。

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調印式に続いてUTCPで、調印のお祝い、グローバルCOE終了、そして海外からいらした先生方の歓迎と三つの趣旨をもったパーティが開かれました。その最後、まったく想定していなかったことですが、研究員のみなさまから花束をいただきました。ああ、幕が降りた、という感慨がありました。
 みなさま、10年という長いあいだ、ご協力ありがとうございました。
 感謝申し上げます。

120327_Party.JPG

(4月より研究休暇をいただきました。さっそく4月3日にはパリに飛び、パリ第8大学で講演をすることになっています。また、気が向きましたら、このブログ欄に投稿させていただくかもしれません。みなさま、御機嫌よう。またお会いしましょう。人は人と出会ってこそ人!それが共生ということの実質だと思います。)

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