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【報告】連続セミナー「イメージと教育」

2011.12.28 寺田寅彦

 さる2011年12月13日(火)と12月16日(金)の両日、UTCPの主催で「イメージと教育」と題する連続セミナーが、東京大学駒場キャンパス21KOMCEE棟で行われた。セミナー発表者はフランス教育博物館(ルーアン)館長のイヴ・ゴリュポ氏と、東京大学総合文化研究科の寺田寅彦(准教授)である。

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 12月13日(火)14時40分から16時10分まで21KOMCEE棟303号室で行われた第一回目のセミナーは、イブ・ゴリュポ氏による発表「教育は博物館のテーマか?―フランス国立教育博物館(ルーアン)コレクションから考える」と質疑応答であった。フランス国立教育博物館の形成の歴史をたどりながら、教育という無形財産を有形財産のコレクションで成立させる教育博物館の使命とその運営の困難を、ゴリュポ氏は現在の歴史研究の抱える問題と相関させながら解説していった。フランス語でなされた発表ではあったが、司会の寺田寅彦による逐次通訳があったこと、たくさんのスライドと連動した内容が分かりやすかったこともあり、広い教室を埋めた参加学生と外部からの参加者は熱心に聞き入っていた。活発な質疑応答ももたれ、フランスにおける教育事情の歴史的概観が、発表の観点からあらためて検討された。また、教育博物館は日本にも多いものの、国立レベルの規模の大きなものは少ないことから、日仏の教育博物館の在り方の違いについても討議がなされた。

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 12月16日(金)16時30分から18時30分まで、21KOMCEE棟201号室でKALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)の協力のもと行われた第二回目のセミナーでは、まず寺田寅彦による「教科書のイラストから見たドイツにおける英語教育」の発表が行われた。ナチス政権下での英語教育がヒトラーの帝国主義的野望と結びついていたことを、一見無関係に見えるボーイスカウトの挿絵から分析するという発表であった。当時のドイツにおけるボーイスカウトの活動はヒトラーユーゲントを優先させる政策ゆえに禁じられていたが、そのために顧みられることの少なかったボーイスカウトとヒトラー政権との結びつきが、アフリカにおけるイギリス帝国主義の植民地政策との関連から緊密なものであることが明らかにされた。質疑応答では日本におけるボーイスカウト活動の帝国主義的側面を示唆する意見交換もあり、問題の規模の大きさが浮き彫りとなった。

 続いてイヴ・ゴリュポ氏による「フランスの歴史教科書のイラストとその基本的演出法」の発表がなされた。歴史教科書がフランスにおいてどのような変遷を見せているか、またその歴史的事実をどのように演出しているかを、イラストの変遷を通して分析する野心的な発表であった。具体例をスライドで紹介しながら分析がなされ、学校教育を通して根付く一般的な歴史観がどのように形成されるかが考察された。質疑応答では歴史的な人物像の形成の過程について、フランスにとどまらない広い視野での論議が活発に交わされた。

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 セミナーの後では懇親会がとり行われ、十数名の参加者を得て和やかに歓談がもたれた。さまざまなプロフィールをもつ参加者が、さらに討論を深める有意義な場となった。
 教育問題は「テキスト」の分析に終始しがちであるが、イメージ媒体を細かく分析することで多くの発見があることをあらためて再確認させられる連続セミナーであった。

(文・寺田寅彦)

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