【UTCP Juventus】金原典子
UTCP RA/学術振興会特別研究員の金原典子です。このシリーズでは、UTCPの若手メンバーが各々の研究について紹介しています。私も過去に二度、報告の機会を頂きました。今回は、私の最近の関心とUTCPでの経験について書きます。
最近の関心
私はこれまで、世界的なムスリムの信仰復興運動に参加する若いムスリムの女性が、どのようにして信仰を通した関係を築いているのかをイギリスでのフィールドワークを通して調査してきました。ナショナリティーに基づかない集団の存在に関心があったためです。特に9.11以降、ムスリムやイスラームについての研究が増えました。しかし、一部の研究が前提としているように、イスラームやムスリムのことを研究することで、テロリズムが説明できるようになるとは私は思いません。調査を進めていく過程で、ムスリムの人々についてよりも、これらの人々を問題視する研究者やメディア、政策について関心を抱くようになりました。特に政策文書において、どのような人々が国家に帰属できる者として捉えられているのか、どのような基準が設定されているのか、に関心を抱きました。移民統合に関係するイギリスの文書においては政策提言の根底にある思想が比較的明確に読み取れるのではないかと思いました。そして、人々がある集団に帰属する際の基準には、どのような思想的背景があるのかに強い関心を抱くようになりました。
また、東京大学で日本関係のゼミに出席させていただき、他の研究者のお話を伺う内に、日本の思想や宗教に関心を持ちました。今までアメリカとイギリスの大学で勉強してきたため、これらについて学ぶ機会は多くありませんでした。安易な考えではありますが、日本の思想や宗教の歴史について学ぶことで、自分が今までイギリスやアメリカで学んできた人類学に基づく思考の枠組みを相対化できるのではないかと思いました。今後は更に日本の宗教や思想の歴史についての理解を深めたいと思います。来月から留学し歴史学科に所属します。
UTCPについて
私はもともと人類学が専門で、現在は地域文化研究科に所属しており、他の研究員の方々とは専門が随分と異なります。UTCPにおける研究活動を通して、先生方や他の研究員の方々から、多くのことを学ばせて頂きました。各国の研究者と対話をする機会を与えて頂き、また、国内外の院生を集めて開催したGraduate Conferenceへの多大なご支援を賜った先生方及び研究員の皆様に、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。今後もまた皆様との交流を続けさせて頂くことができましたら幸いです。
報告者:金原典子