【報告】UTCP Lecture "Modernism and Humor: Reflections on the Critical Cinema of the Shōwa 30s"
2011年6月22日、研究員のマーク・ロバーツさんの講演会 "Modernism and Humor: Reflections on the Critical Cinema of the Shōwa 30s" をおこないました。
ロバーツさんは日本の戦後の映画についての研究をしています。今回は、ロバーツさんに最近の研究成果を発表していただきました。
ロバーツさんが取り上げたのは昭和30年代の映画です。松竹ヌーヴェルヴァーグとよばれた映画界の取り組み(大島渚監督の『日本の夜と霧』、吉田喜重監督の『エロス+虐殺』といった映画がそれに属するようです)を社会批評の観点から考察し、日本固有の特徴を浮かびあがらせようというのがロバーツさんの今回の発表の目的でした。
ロバーツさんのアイデアは日本における「近代主義」は日本独特の性格をもっていて、欧米における “modernism” とは異なるのだ、というものです。
日本における「近代主義」を象徴する映画とロバーツさんが挙げたのは、篠田正浩監督の『乾いた湖』、大島渚監督の『日本の夜と霧』、増村保造監督の『偽大学生』です。これらは、(あるいみで)さめた視点から、当時の学生運動の意味を観客に投げかけているのだとのこと。ロバーツさんがピックアップした映画のワンシーンでは、演劇的なものや風刺が取り入れられていて、それをとおして社会の問題(といいますか、違和感)を描き出そうとしているのが印象的でした(ロバーツさんが見せてくださったのが『日本の夜と霧』と『偽大学生』です)。「もっと詳しく」というかたは、英語版のページにロバーツさんご自身による解説があります。ぜひご覧ください。
今回の講演会は2010年度から開催している「UTCP研究員による研究発表+議論シリーズ」の一貫として開催しました。
中澤栄輔(UTCP・特任助教)