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映像作品「どこにもない場所のための祈り」(2010年パレスチナ/イスラエルへの旅の記録)

2011.01.14 小林康夫, 早尾貴紀, 西山雄二

2010年のUTCPメンバーによるパレスチナ/イスラエルへの旅の記録を、西山雄二さん(首都大学東京)に、映像作品「どこにもない場所のための祈り / Prayers for the Non-Place」として編集してもらいました。2008年のアルゼンチン編の新版と合わせて公開します。

「どこにもない場所のための祈り / Prayers for the Non-Place」
パレスチナ/イスラエルへの旅の記録(2010年10月31日-11月6日)
出演:小林康夫、メロン・ベンベニスティ、カイス・フィッロ、小田切拓、マフムード・­ヤズバク、中島隆博 撮影:早尾貴紀 監督:西山雄二

「もうひとつのEND / Another "END"」
アルゼンチンへの旅の記録(2008年10月)
引用:小林康夫『知のオデュッセイア』(東京大学出版会)
音楽:matryoshka 監督:西山雄二

監督・西山雄二より
 往々にして、学術成果の映像記録はきわめて退屈です。iTunes-Uにみられるように、大学などの研究教育機関はシンポジウムやセミナーの動画を次々と無料公開しています。しかし、残念なことに、その類の動画は固定カメラでバストアップの単調な映像が何分も続くものが大半で、多くの視聴者を魅了しているとはとても思えません。
 そこで、UTCPの旅に関する二つの映像作品では、次のことに気を配りました。
学術シンポの記録であることを基調としながらも、旅の経験と思考を重視すること。地球の反対側・アルゼンチンへの旅、地球の特異点であるパレスチナ/イスラエルへの旅を脈動のある映像作品として提示しようと試みました。
 また、映像の物語の流れに対して、別の条件や限定を加えること。アルゼンチン編では、この旅について主演・小林康夫氏が書いた文章「もうひとつのend、あるいはブエノスアイレスの休日」(『知のオデュッセイア』、東京大学出版会)からの引用を散りばめました。パレスチナ/イスラエル編では、録音された祈りの音を抜き出して、作品全体を包む音の背骨としました。アラム語の祈祷、アルメニア語の儀礼歌、コーランの唱読、カトリックの聖歌斉唱が流れ、異なる祈りの音が共鳴します。
 そして、哲学によって誘われた、哲学の旅の記録である以上、何か理解しえない謎に出会ったという場面を描き出すこと。それぞれの現場で、さまざまな人との出会いを通じて、崇高なもの、アポリア的なもの、超越的なもの、不可能なもの……等々、いまだ思考されてはいないが思考しなければならない何かに触れたという経験です。
 旅と思考に関する映像作品の制作という稀な機会を与えてくれた、UTCPという貴重な場所にはあらためて感謝の念を抱かざるをえません。――西山雄二(首都大学東京)

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