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【報告】クリスティーヌ・ド・ピザン―最初の女性知識人

2010.11.05 村松真理子, 高田康成, 中澤栄輔

2010年11月5日,ボローニャ大学のMaria Giuseppina Muzzarelli(マリア・ジュゼッピーナ・ムッツァレッリ)さんの講演会「Christine de Pizan, Prima donna laica intellettuale di professione: tre temi」(クリスティーヌ・ド・ピザン―最初の女性知識人)を行いました.

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イタリア語での講演,UTCPの事業推進担当者である村松真理子さんが通訳・解説をし,同じく事業推進担当者の高田康成さんがコメンテーターをつとめました.なお,今回の講演会は文化女子大学文化ファッション研究機構とUTCPとの共催でした.

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ムッツァレッリさんの専門は中世史と都市史.中世イタリアの経済やユダヤ人,説教,女性,服飾,食物などにかんする多数の著作や論文があります。邦訳があるものですと『フランス宮廷のイタリア女性―「文化人」クリスティーヌ・ド・ピザン』伊藤亜紀訳,知泉書館,2010年.が最近出版されました.

クリスティーヌ・ド・ピザンというひとがどういったひとなのか,ということについてまったくの白紙状態で臨んだわたしでしたが,それもかえってよかったのかもしれません.というのも,今回のムッツァレッリさんのお話は,これまである意味で歪められてきたともいえるようなクリスティーヌ・ド・ピザンの業績を,できるかぎりクリスティーヌの生きた時代状況にそくしてありのままに取り出そうという試みだったからです.

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クリスティーヌが生きたのは14世紀から15世紀のフランス.ヴェネツィア出身ですが,フランスの宮廷が活躍の舞台でした.クリスティーヌはルネッサンスのフェミニズムというべきものに道を拓いたひと.『女たちの都』などの書物を書き,それをパトロンたちに献呈していくという営業活動をとおして,当時の知識階級に溶け込んでいった(対決しようとした?)女性です.

「クリスティーヌが論陣を張って,女性の権利を擁護しようとしたこと,そのこと自体が非常に重要なことがらである」と,ムッツァレッリさんが強調したことが非常にわたしの印象に残りました.続けてムッツァレッリさんは「クリスティーヌはいったい『フェミニスト』だったのでしょうか.彼女の時代にはフェミニストという概念はなかった.フェミニストという言葉が出てくるのは19世紀の終わりのこと.彼女が書いたものはフェミニズム運動の先駆者であった.というよりも,実践者であった」と言います.クリスティーヌのイメージがバシッとわたしのこころに刻まれました.

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ムッツァレッリさんは絵画(挿絵)のなかのクリスティーヌに注目し,「いつも青い服を着ている」ということを指摘していました.これはクリスティーヌのイメージ戦略,セルフ・プロデュースであるとのこと.服飾にかんする著作の多いムッツァレッリさんならではの視点でしょうか.

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以上簡単ですが,講演会の感想です.まだ物足りない! という方はぜひ『フランス宮廷のイタリア女性―「文化人」クリスティーヌ・ド・ピザン』伊藤亜紀訳,知泉書館,2010年.を読んでみてください.

中澤栄輔(PD研究員)

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