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【報告】UTCP日本思想セミナー "The Aesthetics of Urban Wandering in the Essays of Nagai Kafū and Zhou Zuoren"

2010.06.30 中澤栄輔, 日本思想セミナー

2010年6月23日,フルブライト・プログラムで東京大学に滞在しているティモシー・ゴダードさん(Timothy Goddard, UCLA)が日本思想セミナーを行ないました.

発表のタイトルは "The Aesthetics of Urban Wandering in the Essays of Nagai Kafū and Zhou Zuoren".「東京」をめぐる永井荷風と周作人を論じました.

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今回のセミナーは英語で行ないましたが,ゴダードさんは日本語も上手に使いこなします.ゴダードさんにセミナーのまとめを書いてもらいました.↓

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ニ〇一〇年六月二十三日にUTCPで行った発表では、永井荷風(1879-1959)と周作人(1885-1967)の作文を通じて東京都市空間を問題にした。注目した作品は荷風の1915年作文集『日和下駄』と周作人の作文「東京散策記」(1935)と「懐東京」(1936)である。二人の作家が都市の情緒的なところを認識したことを主張して、街での動きを「散歩」という概念で説明した。「散歩」というのは、単なる歩くことではなく、目的なしで自由に動くこととなる。また、散歩者は都市に対して独特な感覚を持っている。ぶらぶら散歩して、他人の見えないところが発見できる。

これからの研究で、フラヌールという概念から東京での「散歩」を見て、十九世紀末のパリと二十世紀初期の東京を比較的に分析したい。両都市の相似と相違を明らかして、モダン東京の特異性が調査したい。日本の近代化、消費文化、帝国主義を見て、個人と社会の関係を尋ねたいと思う。「散歩」は社会に対して個人的な反応の一つであると考えている。

ティモシー・ゴダード
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永井荷風といえば,わたしは以前に岩波文庫版の『墨東綺譚』を読んだことがあります.梅雨の蒸し暑いさなかのような(ちょうどいま!)ねっとりとした雰囲気が記憶に残りました.国木田独歩の『武蔵野』がもっている「からっ」とした雰囲気と対照的です.ちなみに『武蔵野』も散歩をする話ですね.

ゴダードさんが言うように,散歩をすることでその都市がもっている「におい」みたいなものを嗅ぎとることができます.旅行で訪れた初めての街など,ただなんとなく歩きまわってみたくなるものです.東京はその意味で非常に魅力的な街なのでしょう.UTCPを訪れる海外の研究者の多くが東京の印象を熱く語ってくれます.

でも,わたしがそうなのですが,東京に暮らしてしまえば「散歩者が都市に対してもつ独特な感覚」を持つ機会は稀になってくるでしょう(学校と家との単純往復による散歩度の極端な低下).そうだとしたら,わたしは東京に暮らしていつつも,東京がどんな表情をしているのか,どんな「におい」をもっているのか,かなり無自覚に過ごしているのでしょう.それは,ひょっとしたら非常にもったいないことなのかもしれません.

中澤栄輔(UTCP)

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