【報告】第4回こまば脳カフェ
2009年10月13日、第4回こまば脳カフェ「念じて動かす新技術―社会の中のブレイン・マシン・インタフェース」が開催された。
今回は、慶應義塾大学大学院理工学研究科富田・牛場研究室博士課程でブレイン・マシン・インタフェース (Brain-Machine Interface; BMI) の研究をしている橋本泰成さんをゲストに、東京大学駒場キャンパス18号館4階オープンスペースにて行われた。
最初に橋本さんから、研究されているBMIについて話題提供をしていただいた。BMIとは、脳の活動を読み取り、その状態変化に応じてロボットアームやパソコンなどの外部機器を動かす技術である。また、将来的には、医療応用が期待される分野である。話題提供後、実際にBMIを用いた技術についてデモンストレーションを行ってもらった。最後に、参加者を交え、全体で議論や質疑応答を行った。以下、順に紹介していく。
橋本さんからは、社会の中のBMIとして、1, BMIの実際、2,メリット・デメリット、3,予想される危険という順に話題提供をしていただいた。まずBMIの実際として、BMIの分類である、「侵襲・非侵襲型」、「感覚系・運動系」、「機能代償・機能回復」の紹介から始まった。侵襲・非侵襲型の分類とは、脳のどこから脳波を取るかという基準から分類されるものであり、侵襲型は頭蓋骨の中、つまり脳自体の表面から脳波を計測するものであり、非侵襲型とは、頭蓋骨の表面から脳波を計測するものである。感覚系・運動系の分類とは、失われたような感覚機能を代替する人口内耳のようなものか、それとも外部機器を操作するようなものかという基準によって分けられるものである。機能代償・機能回復の分類は、前者は失われた機能を取り戻すBMI(例えば義手など)であり、後者は長期間BMIを使用することで脳卒中などによって失われた脳の機能自体を回復させようとするものである。
BMIの分類紹介の後、具体的に橋本さんが研究されているセカンドライフを用いたBMI技術についての紹介があった。この研究では、BMIを用いて筋ジストロフィーの患者さんに対して、セカンドライフ(インターネット空間)上のアバターを、脳波をコントロールすることで操作するというものであった。また、橋本さんと同じ研究室のメンバーが研究している機能回復型BMIについての紹介もあった。具体的には、脳卒中のため手が麻痺してしまった被験者が、麻痺手を動かそうとする脳活動(脳波)を記録し、麻痺手を動かそうとする脳波を抽出することで、BMIの長期使用による神経リハビリテーション効果をもたらそうというものである。
話題提供の最後にはディスカッションの話題として、「能力強化の危険性」や「あなたの脳はだれのものか?」などのトピックが紹介された。
話題提供後のデモンストレーションでは、橋本さんが所属する研究室の小野さんから、セカンドライフを運動イメージで操作する様子を実際にみせてもった。カフェ参加者も実際のデモンストレーションを見ながら、質疑応答することで、具体的にBMI技術がどのようなものであったのかが理解できたと思う。
全体のディスカッションでは、質問が途切れることなく、議論が続いた。BMI技術そのものへの質問だけでなく、将来的にどのような応用が考えられるのかといったことにまで議論が及んだ。ファシリテーターとしては、もう少しハードルの低い質問が多くの参加者から出るような雰囲気作りができればと感じた。この点については、ファシリテーターとして、次回以降の個人的な反省にしたいと思う。
カフェ全体の感想としては、参加者も40名弱と多く、様々なバックグラウンドを持つ方々に参加してもらえたことで、議論の幅も広がったと思う。BMIに関するサイエンスカフェについては、今後もいろいろな場所で開催されることが予想されるので、そういった場で議論を継続していってもらえればと思う。
礒部太一(東京大学大学院)