【報告】中独哲学シンポジウム「啓蒙とグローバル化」@中国・武漢
10月24日から26日まで、中国・武漢大学・哲学学院において、中独哲学シンポジウム「啓蒙とグローバル化」が行われた。
このシンポジウムは、現在、北京、武漢を中心として、中国とドイツとの公式文化プログラムである「中徳同行」(China and Germany together in movement)の一環として行われたものである。UTCPからは北川東子が出席し、「日本から啓蒙を考える-制度化された啓蒙のパラドックス」というタイトルで発表を行った。ドイツからは、カント研究で高名なミュンヘン大学のツェラー教授やベルリン自由大学COEの主要メンバーの一人で、「感情の言語」プロジェクトを主催しているヴルフ教授など6人が、香港から香港中文大のラオ准教授、そして中国側は武漢大学のXiamang Deng教授をはじめとして、北京大学Shuifa Han教授、復旦大学Yaling Luo准教授など、カント研究やドイツ哲学研究者が参加し、それぞれきわめて質の高い発表を行った。
21世紀の初頭という時点で、中国・武漢という場所で、「カント哲学の今日的意義」を問い直すという試みであった。最近のドイツ哲学の研究は、ドイツでも文献学的研究に傾きがちで、あまり新鮮な議論に出あうことがない。しかし今回の会議では、「啓蒙とはなにか」というカントの短いテキストがもつはかりしれない思想的深さを実感させられることとなった。
カント哲学-中国-21世紀という組み合わせが哲学的になにをもたらしうるかについては、後日詳しい考察を行う予定であるが、この組み合わせが、現時点で哲学をする者にとって、途方もない課題と刺激とを与えてくれることは疑いもない。
中国は、4月の日中哲学会以来二度目であったが、今回は特に、若い大学院生の知的関心と知的エネルギーには圧倒されるものがあった。
(文責:北川東子)