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時の彩り(つれづれ、草) 081

2009.10.13 小林康夫

 秋の光

秋の光には弱い。

今日のような透明な光がそれでも穏やかに差し込んでくると、どうもそれがわたし自身への鋭い刃となり、わたしを刺し貫くようでいたたまれない気持ちになる。いったなにをやってきたのか、これまで。生きるべきものをただしく生きてきたのか?と切っ先は胸に食い込む。
まあ、答えようもないので、ただ棒立ちに突っ立っているだけなのだが・・・・

先週、駒場では薪能があり、お家元の観世清和さんの「紅葉狩」(なにしろ鬼がぞろぞろ出てくるこんなスペクタクルな能もまたあったのかとおもしろかったが)、野村萬斎さんの「萩大名」と豪華メンバー。風は少し強かったが、こういうイベントが行われるのは駒場キャンパスらしくていい。

駒場博物館で開催中の「観世家のアーカイヴ」展の関連だが、この展覧会もすばらしい。それぞれの文書の書の立派さ、われわれがつとに失ってしまった知性の伝統。ぜひごらんください。わたし自身も、関連で、11月16日に松岡心平先生と直筆本が出ている「檜垣」をめぐって講演会を行う予定です。

「観世家のアーカイブ」展:
http://museum.c.u-tokyo.ac.jp/exihibition.html#kanze
    
薪能にご招待した方が翌日のニューヨークフィルのチケットをくださった。で、サントリーホールに、ベートーベン交響曲第7番、モーツァルトの「ジュピター」などの熱演を聴きに行った。行く前に実家に寄ったら、昔の本箱のなかに、、学生時代に買ったスコアがあり、「ジュピター」もあった。スコアなどほとんど読めもしないのに、いくつも買ったなかのひとつ。

まあ、多少は小林秀雄の影響もあるのだろうけど、懐かしさからそれをもってコンサートに行った。別に聴きながら見たりはしないのだけど。でも、20代の頃の自分のなかに疼いていた(いまもあるけど)音楽への遥かな憧憬を思い出してちょっと感傷的だったか。ベト7にはまた別の思い出もあるし・・・
 
秋、さあ、哲学の季節!

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