時の彩り(つれづれ、草) 077
☆ 夏のNota Bene (5) (『知のオデュッセイア』)
久しぶりのことですが、「自分の本」をつくりました。
東京大学出版会の月刊誌『UP』 に2年間にわたって連載していたものに、Yahooの「達人コーナー」という場所で1年間「アートの達人」としてアート関係のエッセイを書いていたものを併せた本です。
連載のタイトルは「UTオデュッセイア」で東京大学(UT)の理系の先生方の研究室を訪れて、そのサイエンスの現場の「岬=先端」に、文系の人間あるいはフィロソフィアの徒としてどう反応するのか、ふらふらとあてどない旅をしたその記録ということだが、さすがに毎月、新しい勉強をするのが追いつかないときもあって、苦し紛れというか、UTCPの活動にふれたものもいくつかあるし、坂本龍一さんとの対話授業の報告、さらにはわたし自身の入院体験の報告まであるというわけで、類のないおかしなエッセイ集ではある。まあ、わたし自身が2年間に動き生きたその「活動」の記録というのがいちばん適切でしょうね。
しかしそのなかで現れてきたテーマのひとつをあえて言うならば、「カオス的理性」ということになるかもしれない。つまり理性の革命――たぶん、そういう方向にわたしは行きたいのだなあ、ということがデッサンかスケッチのように透視できる(と信じたい)。
装丁はその「カオス的遍歴」の図式を、地中海のブルー!に落とすというわたし自身のアイデアが原型になっている。思い通りの美しい本ができてとてもうれしい。「研究成果」というには、おこがましいが、わたしの人生の収穫のひとつ、いつかのぞいていただければ幸いです。
小林康夫『知のオデュッセイア 教養のためのダイアローグ』(東京大学出版会、2009)
目次詳細 >> http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-013026-4.html