時の彩り(つれづれ、草) 072
☆ フランソワ・ヌーデルマンさんの講演
拠点リーダーとしては命が縮むようなグローバルCOEの中間評価ヒアリングもなんとか終わってほっとした先週、21世紀COEのときのオープニング・セレモニーに招聘したヌーデルマンさん(パリ第8大学)が来日、というので専門のサルトル関係ではなく、去年出版された「哲学者たちのタッチ」にちなんだ話をしてもらおうとお願いしたら、13歳のお嬢さんをともなっての登場。
サルトル、バルト、ニーチェとそれぞれピアノを弾く経験が見せてくれるかれらの「思考の余白」の話は感動的なまでにおもしろかった。
こちらも5月のポリーニの演奏によって目覚めさせられたシューマン理解などをもとに、ショパンとシューマンを対比しつつ、バルトのシューマンを「みずからを聴く」ことなどとコメントして、そのやりとりは、たぶんお互いに「手ごたえ」があったと思う。ピアノというモデルニテの象徴のような楽器についての応酬もあって、文化論としても興味深かった。わたしとしては、こういうふうに気軽に立ち寄って、すてきなレクチャーをしてくれる友人がいることの幸せをあらためて味わった次第。
☆ ステファニア・バンディーニ先生来訪
そして今週の7日七夕には、ミラノからいらしたバンディーニ先生がオフィスに来訪。東大の工学部に2ヶ月いらしている複雑系と人工知能の専門家。哲学との出会いが必要と駒場の活動にも興味を持ってくださったようで、こちらは村田純一さん中心にお相手をさせていただいた。海外の理系の研究者が訪れてくれるというのは、やはり出来事!バンディーニ先生がリーダーをしているセンターとなにか共同のワークショップでもできるといいのだが……
☆ 祝・博士論文審査合格
最近、UTCPのPD2名が博士論文審査を受けて、みごと合格しました。おめでとうございます。
ひとりは、桑田光平さん。パリ第4大学に出したロラン・バルトについての論文「La 《 moralite 》 de Roland Barthes」。主査はコレージュ・ド・フランスのアントワーヌ・コンパニョン、ほかの審査員はエリック・マルティや、ソフィ・バシュ、かつてUTCPのコロックにも来てくれたクロード・コスト。6月25日でした。
もうひとりは、平倉圭さん。本学の学際情報学府に提出した「ジャン=リュック・ゴダール論―編集/ミキシングによる思考」。主査は田中純さんで、ほかの審査員は、石田英敬、松浦寿輝、蓮實重彦、前田英樹の各氏。6月27日でした。
もうひとつ、いまわたしが読んでいる博論が、大橋完太郎さんの「群れと変容の哲学」、これはディドロ論ですが、公開審査会は7月11日の土曜午後1時から。駒場の8号館3Fです。書くほうもたいへんだけど、読むほうもたいへんです。審査員は高橋哲哉、高田康成、中島隆博の各氏に、外部より鷲見洋一先生です。