【報告】短期教育プログラム「インターメディアリティへの接近―文学と芸術の生成空間」
旧来の教養体系の再編がゆるやかに進行するようにみえる現在、メディア・コミュニケーションの構造にも大きな変容が生じている。それは、あらかじめ位階関係にある複数のメディアやジャンルを前提に、送り手の側による情報の伝達を問題にしてきた、従来の文化流通をめぐる概念を無効にしてしまうものである。インフォメーション・テクノロジー、「文化」産業のグローバルな展開など、文化領域の地殻変動をどのように読み取っていけばよいだろうか。
例えば、テクスト、イメージ、音、アニメ、コンピューターなどの多様な組み合わせが、送り手側と受容者とが共有する約束事・形式を変えているのは確かである。このようなメディア環境におかれている我々は、目が映像、耳が音、脳神経がテクストを分業的に知覚しているのではなく、より「総合的」な形でとらえるようになっている。すなわち、研究の場においても、テクスト・イメージ・音が生成される空間をより立体的に考えることが求められているのである。
文学や芸術の空間をより立体的に想定できる「インターメディアリティ」への接近を試みることで、テクスト・イメージ・音などをめぐる解釈・読解行為そのものがいったいどのようなものであり、その意味の生成行為がどのようなかたちで社会との繋がりを構築しているかを見極めることができるだろう。
主催:高榮蘭(UTCP)
これまでの活動
本研究会はこれまで5回の研究会とワークショップを実施した。
● 第1回 2008年2月18日 「〈戦後〉神話と〈文化人〉の条件」
発表者:高榮蘭(UTCP)
● 第2回 2008年3月10 日 「ミニパネル ユートピアと応答可能性」
発表者:井戸美里(UTCP)Dennitza Gabrakova (City University of Hong Kong)
● 第3回 2008年6月16 日
ワークショップ「雑草・空隙・風流 ― 彫刻家、須田悦弘との対話」
基調報告・コメント:須田悦弘(彫刻家)
発表者:Dennitza Gabrakova (City University of Hong Kong)
「『近代の日本』の隙間―雑草という手法」
井戸美里(UTCP)「草花の造形―日本美術における風流的なるもの」
● 第4回 2008年8月4日
発表者:植松瑞希(東京大学大学院人文社会系研究科・美術史学D1)
「蘇松優劣論と陳継儒(1558-1639)」
田中有紀「中国音楽を語る場-楽経をめぐる議論-」
● 第5回 2008年9月19 日
ワークショップ「暴力の記憶と小説の現在」
発表者:Adrienne Carey Hurley(カナダ・McGill大学)
「星野智幸『ロンリー・ハーツ・キラー』(2004年、中央公論新社)」
内藤千珠子(大妻女子大学)「中島京子『FUTON』(2003年、講談社)」
高榮蘭(UTCP)「阿部和重『シンセミア』(2003年、朝日新聞社)」