田中純『政治の美学――権力と表象』
事業推進担当者の田中純さんがこのほど、東京大学出版会から『政治の美学――権力と表象』を出版されました。
政治的暴力を美化する情動の論理を、多領域にわたって分析する書。時代論、政体論、結社論、表象論の四部構成です。
[目次]
序
目次
I 一九七〇年代のナチ・テロル・ロック ――時代論
序「ファシズムの美学」再考 ――スーザン・ソンタグ「魅惑するファシズム」
美と腐敗 猥褻な理想と暴力のエロス化
1 キッチュな黙示録 ――ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク『ヒトラー、ドイツからの映画』
ヒトラー映画『没落』 死のキッチュとその累乗 集団的記憶の徹底操作――ジーバーベルク『ヒトラー、ドイツからの映画』(一) 導入部の分析――ジーバーベルク『ヒトラー、ドイツからの映画』(二) 人形による悲哀劇――ジーバーベルク『ヒトラー、ドイツからの映画』(三) 審美主義の逆説
2 白い恐怖、赤い亡霊 ――クラウス・テーヴェライト『男たちの妄想』と一九七〇年代ドイツ
観客のまなざしとファシズム──パゾリーニ『サロ、あるいはソドムの一二〇日』 堤防としての身体──テーヴェライト『男たちの妄想』(一) 生まれきらなかった男たち――テーヴェライト『男たちの妄想』(二) もうひとつの皮膚──テーヴェライト『男たちの妄想』(三) 歴史認識と無意識──テーヴェライト『男たちの妄想』(四) 自伝から同時代史へ 赤軍派の亡霊 「抽象急進主義」と芸術
3 自殺するロックンロール ──デヴィッド・ボウイにおけるロック・イデオロギー
ロック・イデオロギーの「呼びかけ」 分身という戦略──『ジギー・スターダスト』 ロックの「時間」と「夢」 総合芸術作品のメディア力──『ダイアモンドの犬たち』 ロックの臨界点──『ロウ』
第I部・結び──亡霊的権力あるいは権力の亡霊
II 権力の身体 ――政体論
序 権力の三つの身体 ――聖体から革命の身体へ
聖体の超実在性 国家という怪物の身体 理想的身体とその脆さ
1 ギリシア幻想の身体 ――ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマンと古代の模倣
禁忌の土地 完全な身体というファンタスム 寓意的解体のまなざし 古代を「もどく」
2 レヴィヤタン解剖 ――カール・シュミットにおけるイメージ・表象・身体
カール・シュミットのイコノロジー 時間の政治的イコノグラフィー 表象の過剰補償 近代的政治の身体あるいは肉 獣人としての主権者の肖像
3 子午線のデザイン ――カール・シュミット『大地のノモス』
ヨーロッパの美的政治とその解体 子午線の彼方──シュミットとコジェーヴ
4「英霊」の政治神学 ――橋川文三と「半存在」の原理
二つの生命 幽顕思想と祖霊信仰 天皇制政治神学の教理問答 「死のメタフィジク」と「死に損い」――橋川文三の思想的根拠(一) 「超越者としての戦争」――橋川文三の思想的根拠(二) 「美」に抗する「歴史」――橋川文三の思想的根拠(三)
第II部・結び──芸術家という「王」たち
III 男たちの秘密 ――結社論
序 男性結社のエロス ――三島由紀夫と結社論の諸問題
恋する結社 ドイツにおける男性結社論の系譜 脆弱な男性性 稚児と幼童天皇 絶対者との契り
1 主権の秘密 ――オットー・ヘフラー『ゲルマン人の祭祀秘密結社』とその周辺
『年齢階梯制と男性結社』から『古ゲルマンの青年入社式と男性結社』へ 社会・文化的症候としての神話学──ヘフラー『ゲルマン人の祭祀秘密結社』(一) エクスタシー的儀礼からの国家秩序の生成──ヘフラー『ゲルマン人の祭祀秘密結社』(二) ギンズブルグによるヘフラー批判とその盲点 狼たちの結社――ヘフラー周辺の議論から カネッティの群衆論と『ゲルマン人の祭祀秘密結社』
2 戦士の到来 ――社会学研究会とジョルジュ・デュメジル
秘密結社と「冬の風」 戦士と魔術師──一九三〇年代のデュメジル(一) 生ける神話──一九三〇年代のデュメジル(二) 聖社会学と「政治の審美化」 戦士の罪──デュメジルとクラストル
3 亡命者たちの山 ――日本における男性結社論の系譜
「無縁」な者たちの「組合」――中沢新一『芸術人類学』からの遡行(一) 王と山伏──中沢新一『芸術人類学』からの遡行(二) 『古日本の文化層』と「日本とゲルマンの祭祀秘密結社」 新羅花郎とその変容 亡命の民たち
第III部・結び──保田與重郎『萬葉集の精神』とカントロヴィッチ「秘密のドイツ」
IV 建築と政体 ――表象論
序 建築空間の政治学 ――ミース、アールト、ル・コルビュジエ
帝国・小国・遊牧民
1 近代というナルシス ――ル・コルビュジエの遡行的問い
水上のユートピア パルテノン神殿と建築の決定的瞬間 幾何学と起源 建築と表象
2 小国民の建築 ――アルヴァ・アールトの「小さな人間」
建築の戦い 小国民の政治と芸術 ヘテロトピア・触覚性・遊牧民
3 ファシズムの表象 ――ジュゼッペ・テラーニの倒錯的合理主義
裏返された「ガラスの家」──カーサ・デル・ファッショ 古代との闘争――ダンテウム 建築と政治
4「どうしようもないもの」との葛藤 ――堀口捨己における日本・近代・建築
「様式なき様式」の形容矛盾 庭という夢の舞台 パルテノンの女神 「ほのかなる かそけきもの」へ
第IV部・結び──ナルシスたちの闘争と逃走
エピローグ
註
跋
附録
年表
書誌・フィルモグラフィ・ディスコグラフィ
図版一覧
索引
[紹介ビデオ(リンク)]
これだけでは内容までわかりませんが、映画の予告編のようなものとして。
画質は落ちますがYouTubeでも見られます。
[レクチャー(2009.01.08)音源(MP3音声ファイルのリンク、55.2MB)]
本書について、1時間20分の解説です。