時の彩り(つれづれ、草) 049
2008.10.30
小林康夫
☆ 到着(『鼠、100年をかける』)
自宅に大きな本の小包がひとつ届いた。なかをあけると『Jahrhundert Einer Ratte』。勝手に標題のように訳してみたが、実は、漫画である。作者は、Marcus Herrenbergerさん。
そうだ、もう2年以上前になるかな、韓国の漫画家の李元馥(リ・ウォンヴォク)先生とご一緒に渋谷のイタリアレストランにご招待したことがあったなあ。そのときこの漫画の生原稿を見せていただいた。
それは、2部に分かれていて、最初が「レーニン、ジャズ、ハリーライムのあいだ」、そして次が「カサ・ブランカから京都へ」。一匹の鼠が、1917年10月26日ペトログラードから出発して、時代を横切り、両大戦を潜り抜け、さまざまな都市、さまざまな「映画」を通過しながら、最後は、現代の京都へと辿り着くのだ。
現代の歴史の横断である。それがロシア革命からはじまり京都で終わっていることに不思議な感覚を覚えた。そのときのたった一度の「めぐり合わせ」を覚えていて、本になった作品を署名入りで送ってくださった。嬉しいなあ。その「友情」に応えるためにも、ここにみなさんに紹介させていただく。出版社は、Michael Neugebauer Editionです。