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中島隆博+ジョエル・トラヴァール ジョイント・セミナー第3回 (最終回) 報告

2008.08.26 └中国儒学, 田中有紀, 哲学としての現代中国

中期教育プログラム「哲学としての現代中国」の一環である「中島隆博+ジョエル・トラヴァール ジョイント・セミナー」の最終討論会が7月17日に行われた。

  まず、トラヴァール氏が、今回のセミナーで触れた3つの主要なトピックを示した。

  最初のトピックは、宗教と政治との関係において儒教を考えること、すなわち世俗化という文脈において儒教をどう捉えるかという問題である。世俗化という概念は西洋に起源を持ち、西洋社会において宗教的なものと非宗教的なもの(政治的、社会的、文化的なもの)を区別することは容易であり、また世俗化という概念の意味も明白である。しかし中国では、宗教的なものは非宗教的なものと分離されえず、我々が中国の文脈に世俗化の定義を位置づけることはとても難しい。

  2つ目のトピックは、日本の観点から現代の儒学を考察することである。中島氏はこれに関していくつか重要な問題を提起した。例えば、近代日本の大学において論じられた学術的な儒教である。近代日本の議論は、現代中国において展開されている儒学復興の議論に先行しており、現代中国で何が生じているのかを知るためには、日本の経験を必要としなければならない。

  3つ目のトピックは、中国文化にアプローチする際に、どのようにして西洋のカテゴリーを用いるかという問題である。最後の2回のセッションでは、世界哲学を語る際にしばしば用いられる概念、すなわちaxial age とtranscendenceについて考察した。セッションでは、中国におけるaxial ageやtranscendenceについて論じた様々なテキストを読んだが、そこで論じられた問題は複雑であり、また結論は満足のいくものではなかった。axial ageはキリストに起源を持つ概念であり、またtranscendenceもキリスト教の概念であるから、こういった概念を中国の文脈に適用しようとした場合、多くの困難が生じてしまう。

  両氏のコメントに対して、参加者から多くの質問が寄せられた。そのうちいくつかを紹介すると、「axial ageの後の中国思想史をどのように評価すべきか」、「state religionとcivil religionの差異を中国や日本の文脈でどう理解すべきか」、「日本美術における私的な場と公的な場でのclassical turnの違いをどのように考えたらよいか」、「儒教の世俗化とは何か」といった問題である。
セミナーでは毎回、重要な講義と活発な議論が展開され、参加者はそれぞれの研究にとって非常に有益な示唆を受けた。このような貴重な機会を与えてくれた両氏に改めて感謝したい。

田中有紀 (UTCP共同研究員)

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