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ボヤーリン兄弟『ディアスポラの力』、日本語訳刊行

2008.07.06 早尾貴紀, 出版物

 ジョナサン・ボヤーリン&ダニエル・ボヤーリンの兄弟による共著、『ディアスポラの力――ユダヤ文化の今日性をめぐる試論』の日本語訳が刊行されました。赤尾光春・早尾貴紀の共訳で平凡社から。

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 ジョナサンはイディッシュ文化&現代思想、ダニエルはタルムード学&現代思想のあたりを専門領域とする、いずれも敬虔なユダヤ教徒です。
 ボヤーリン兄弟によるユダヤ・ディアスポラ論の主眼は、
◆ ラビ・ユダヤ教の伝統は、イスラエル国家を支える近代シオニズムとはまったく矛盾し、人為的な覇権国家はむしろユダヤ教の否定である。
◆ ユダヤ人のディアスポラ思想は、非ナショナルな文化的アイデンティティの肯定であり、それこそがユダヤ文化の真髄をなす。
◆ こうしたディアスポラの思想は、宗教的ユダヤ人の側からパレスチナ/イスラエル問題に関して、占領はもちろんのこと「ユダヤ人国家」に反対するという倫理的態度を示しうる。
◆ またディアスポラ思想は、覇権主義的なナショナリズムに基づく占領や暴力や支配や紛争など、現代世界の多くの問題に対して、示唆となりうる。
などなど。

 いろいろな思考の材料が含まれています。
 とりわけ、宗教的・民族的アイデンティティの問題、異教徒(キリスト教徒やムスリム)との共存の問題について,ユダヤ思想&現代思想の観点から、精緻な議論を展開しています。UTCPの「共生のための国際哲学」に対しても、さまざまな刺激になるものと思います。ぜひお買い求めください。

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