【報告】UTCPワークサロン 「古典的人間像 東洋編」
UTCPワークサロン「古典的人間像」は、東洋編から行われることになった。
まず初めに、小林康夫リーダーから、このワークサロンでは、世界の地域間の違いを強化するのではなく、わずかな違いで地球を取り巻いているという理解を目指すべきであるとする方向づけがなされた。
続いて、中島隆博准教授から、世界各地で起こっている古典回帰の現象に関して問題提起がなされた。中島准教授は、現代中国で起こっている儒学復興の現象、特に本年の世界儒学会議における言説を取り上げ、それが1930年代の日本における言説と類似していることを指摘し、どのような方法で古典を理解すればよいかという問題を提起された。その中で和辻哲郎への言及がなされ、和辻の古典理解について黒住真教授との議論がなされた。
仏教については、丘山新教授からいくつかの指摘がなされた。丘山教授は、黒住教授の質問を受けて、紀元前一世紀頃における人間観に関する根本的な変化について説明されたほか、中国とインドの人間観の違いなどについて指摘された。
また、古典と現実社会の関わり方についても議論が展開された。その中で、齋藤希史准教授は、近代日本では、既に対象化された西洋の古典への対応に追われ、東洋の古典を癒しの場とする傾向があり、東洋の古典を対象化できなかったと指摘された。
羽田正教授は、古典について、人が必要とした時に古典が現れるのであり、日本的古典とは何かを考えるのではなく、人間全体としての古典は何かを考える視点を強調された。
小林リーダーは、古典とは二つ前の時代のものであり、自分にとって直接的な態度決定の必要性がないものであることを指摘された。
今回、東洋の古典を中心として幅広い議論が行われ、今後のイスラーム編・西洋編においても検討されるべき問題の提起がなされた。今回の議論の詳細は、本年UTCPから刊行されるブックレットに掲載予定である。(古橋紀宏)