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【報告】「哲学を事業にすること」――株式会社TETSUGAKUの小林氏を迎えて

2025.11.24 堀越耀介 Permalink

11月21日金曜日19時より、株式会社哲学の代表である小林和也さんをお迎えし、「哲学を事業にすること」と題したオンラインイベントが開催された。

株式会社TETSUGAKUの代表である小林さんは、同社の設立経緯、サービス内容、そして哲学を社会に普及させたいという情熱について語った。北海道大学発のベンチャーとして設立された同社は、世界的現象学者である田口茂氏をCPO(チーフ・フィロソフィカル・オフィサー)に迎え、企業や個人向けに哲学コンサルティングや研修などを提供している。議論は、小林氏個人の哲学への目覚めから、ビジネスにおける哲学の役割、そして今後の展望にまで及んだ。

小林さんは北海道大学発ベンチャーとして、本年6月に設立された株式会社TETSUGAKUの取り組みを紹介しながら、哲学実践を社会に開いていくことの可能性と課題について語った。同社は企業・個人向けに哲学コンサルティングを提供しており、北海道大学の現象学者・田口茂氏との協働関係のもと、学術的な専門性に基づいたサービスを展開している。

サービスとしては、主に以下の4つを提供する。 1. 哲学コーチング: 個人が抱える問題について深く考えるための対話。 2. コンサルティング: プロジェクトなどが抱える課題解決に向けた対話。 3. メディエーティング: 組織内で生まれた理念などを浸透させるための媒介的な対話の場作り。 4. 研修: 哲学の専門知識に関する講義や演習。

お話の中で印象的だったのは、小林さんが自らの現在の状況を、ハンナ・アーレント『人間の条件』の概念を通して語った点である。アーレントは人間の営みを労働(labor)、仕事(work)、活動(action)に区別したが、小林氏は今まさに会社という形で「世界に現れる」ことを試みている自分自身の状況を、アーレントの言う「活動」として捉えていた。活動とは、言葉と行為によって人が公共の場に現れ、その人のユニークな存在が暴露されることである。この実存的な自己理解のもとで会社を立ち上げたという語りには、哲学を生きることと実践することの密接な結びつきが表れていた。

彼が強調したのは、「一緒に考え抜く」ことの重要性だった。人生における大きな問いに連れ添い、共に驚き、共に探求する。答えを与えるのではなく、その人が向かうべき問題の入り口まで一緒に到達すること。彼自身、学生時代の仲間と今も読書会を続けており、哲学のテクストを共に読み、語り合える友人がいることの幸福を語った。その幸福を社会に普及させたいというのが、彼の根本的な動機となっている。小林氏の様々な実践形態は、この根源的な哲学することがたまたま異なる形を取ったものに過ぎないようにも感じられた。


【UTCPラジオ】問いの手触りを取り戻す――宮田晃碩さんインタビュー

2025.11.10 Permalink

ハイデガー研究を経て、「問うとは何か」という根本的な問題に向き合ってきた宮田晃碩さんをお迎えしました。

2022年4月から二年半UTCPに所属し、現在は出身研究室の助教として活動している彼は、今もUTCPと関わりながら多彩な企画に参加しています。

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【UTCPラジオ】「〈雰囲気〉を哲学する」――桑山裕喜子さんインタビュー

2025.10.28 Permalink

今回は、東京大学でドイツ語と現代思想を教えながら、言語と哲学、そして生の感覚を行き来する思索を続ける桑山裕喜子さんをお迎えしました。

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【デザイン×哲学 ワークショップ@東京大学】河本有香(デザイナー)

2025.10.07 梶谷真司 Permalink

2025年の夏、7月12日に、東京大学の駒場キャンパスにて、哲学者の梶谷真司さんと「デザイン×哲学」のワークショップを開催しました。テーマは「Who am I? ―私って何者なんだっけ?」。私が主催するセルフブランディングプログラム【My Narrative Book】と哲学対話を掛け合わせ、この問いに挑みました。

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【報告】UTCP Series Second View 第4回「医療刑務所における摂食障害の治療」報告書②

2025.09.27 梶谷真司, 山田理絵 Permalink

 この報告では、2025年5月24日(土)13:00〜15:30に開催されたUTCP Series Second View 第4回「医療刑務所における摂食障害の治療」の内容を紹介する。この講演会では、北九州医療刑務所から、心療内科医の瀧井正人先生、看護師の守田裕子先生、刑務官の髙野美幸先生をお招きし、それぞれのご専門の立場から矯正医療における摂食障害の患者の処遇と治療についてお話しいただいた。

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【報告】UTCP Series Second View 第4回「医療刑務所における摂食障害の治療」報告書①

2025.09.27 梶谷真司, 山田理絵 Permalink

 この報告では、2025年5月24日(土)13:00〜15:30に開催されたUTCP Series Second View 第4回「医療刑務所における摂食障害の治療」の内容を紹介する。この講演会では、北九州医療刑務所から、心療内科医の瀧井正人先生、看護師の守田裕子先生、刑務官の髙野幸先生をお招きし、それぞれのご専門の立場から矯正医療における摂食障害の患者の処遇と治療についてお話しいただいた。

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【UTCPラジオ】医療と哲学のあいだで——UTCP新メンバー中川萌子さんインタビュー

2025.09.08 Permalink

哲学から医学へ、さらに生命倫理学、環境哲学へ――領域を横断しながら思索を深めてきた中川萌子さん。2025年6月にUTCPに加わった新メンバーとして、哲学を「実践」にどうつなげていくかを探っています。

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【報告】ワークショップ「子どもから学ぶ哲学」

2025.09.02 李太喜 Permalink

2025年6月28日、ワークショップ「子どもから学ぶ哲学」が駒場キャンパスにて開催された。3月に行ったワークショップ「子供を育てるってなんだろう」につづく、「子どもと哲学」をテーマにしたイベントの第二弾となる。

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【報告】ワークショップ「哲学的懐疑論と現代社会の懐疑論」

2025.09.02 李太喜 Permalink

2025年3月15日、駒場キャンパスでは「哲学的懐疑論と社会的懐疑論」と題したワークショップが開催された。前半は名古屋学院大学の横路佳幸先生による講演、後半には参加者全員を巻き込んだ哲学対話を実施した。

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【UTCP Radio】問いの可能性を探索する——李太喜研究員インタビュー

2025.08.25 Permalink

ゲストはUTCP研究員 李太喜(イ・テヒ)さん。

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