破急風光帖

 

★  日日行行(602)

2023.02.10

* 雪ですね。明るい灰色の空から雪が舞うように降ってきます。都会に降る雪、若い10代の頃からいつも、心を震わせてきました。「雪の降る街を 思い出だけが通りすぎて行く」・・・とか。もちろん「雪が降る あなたは来ない」とか・・・湧き上がる歌がありますね。

 ならば、今日の雪をお迎えするには・・・となって、そうだ、一椀の茶を、となりました。ちょうど1週間ほど前に買った抹茶もあるし、お茶を点てていただこう、と。2年前の日本経済新聞の「こころの玉手箱」(2月10日づけでしたね)で書かせてもらったように、自作の楽茶碗を取り出して、簡単なお点前。それをベランダに面した窓ガラスの傍に正座していただくのです。空を見上げると舞い散る雪。その雪がわたしの体の上に降ってくるとイメージして、抹茶の緑で受けていただく。それだけ。ずっとこうして、雪降る夜道を歩いてきたんだ、みたいな思いが涌きあがります。
 そのエッセイの最後はこうでしたーーー「もちろん、不細工だろう。だが、そこにはわたしの手の痕跡が残っている。それはわたしという器。それを両手でいただいて空へと差し出す。そして呟く。〈日常非常!〉と。」
 


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