破急風光帖

 

★  日日行行(287)

2020.02.03

* たしか今日は立春だったのではないでしょうか。わたしにとっては、誕生日が近いこともあり、この春立つモーメントこそ、新しい年の出発ですね。前回予告したように、青山学院での最後の仕事である修士論文審査を終えて、そのまま羽田に直行。その二十数時間後には、パリのセーヌ通りのカフェ・ラ・パレットの外のテーブルでシャンパーニュを一杯自分に捧げてました。

 パリは「わが街」なのですが、それでも歳とともに、日本から飛び立って精神のハードルをひとつ超えなければならないのが億劫になります。面倒くさいなあ、みたいな。でも、結局は、スムースにいつのまにか、身体に染み付いたパリ・システムを起動させている感じがします。
 そのカフェに、イレーヌさんとヴァンサンさんが来ておちあって、いっしょにそこから近い画廊へ。15時から4時間限定のイレーヌさんの展覧会。わたしと彼女がいっしょにつくった詩画集も原画も展示されました。多くの人が来てくれました。古い友人たちも。いい時間だったなあ。
 感動したのは、オープンしてすぐに入ってきた妙齢の女性が、「この展覧会のフライヤーの絵を見て心うたれて来たの」と言って、わたしたちの詩画集、限定15部、一部400ユーロをさっと買っていってくださったこと。小切手をきって。さすが、パリ!彼女がわたしの詩を読んでくれるんだ、と感動しました。
 あとからもう1冊売れました。日本で1冊買っていただいているので、残りはあと12部です!
 イレーヌさんとは、次の協同作業の話をしています。その詩画集のテクストは、ちょうど1年前にパリで書いた「水と火と」でした。それをわたしたら、イレーヌさんがインスピレーションを得て、1週間くらいで8枚の作品を描いたのでした。今度もこのパリ滞在のあいだに、わたしが「花」をすくいあげることができるといいんですけどね。
 静かな雨が降るパリ。寒くはなく、まるで春先。わたしの「再出発」をやさしく見守ってくれているような気がします。


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