破急風光帖

 

★  日日行行(170)

2018.08.05

* 一泊でしたが、越後妻有へ。福武財団の助成成果発表会と「大地の芸術祭」のツアーでした。

 10年間財団の助成選考委員長をつとめてきて、二年前の最後の助成選考会で助成を決めた活動の成果を見届ける会でした。この成果報告会も、助成がはじまって3年くらいたったところだったか、地域振興の活動している方々の相互の交流のためにもなにか会をやってほしいという希望を財団がすぐに聞き入れてくださった実現したもの。越後妻有に3回、瀬戸内に2回、南三陸に1回、別府に1回行っていると思います。そのたびごとに芸術祭の現場にも触れることができて、とてもいい経験でした。多くのことを学びました。最後のスピーチでは、いらしていた福武さんにもお礼を申し述べられました。
 今回、「大地の芸術祭」を観て、また、昨日朝の北川フラムさんのレクチャーを聞いて、やはりアートの変貌にあらためて眼を開かされました。少し遅いのかもしれませんが、芸術がどこかでモデルニテの規範からまったく別の次元に行こうとしているということを強く感じます。それは、一方では、わたし自身はもう時代遅れだなあ、という感覚にもなるのですが、歴史の転換点を曲がろうとしているという思いはとても強い。
 わたしが生きてきたこの半世紀というのは、人類史上にとっても、19世紀の産業革命の時代に匹敵するほどの大きな転換の時代であったということを思います。でも、同時に、さまざまな価値基準に関しては、少しも新しいものが出てきているわけではない。難しい時代です。
 そんなことを思いながら、早朝、夏の光を浴びて、あてま高原の緑の道をひとり歩いている時間はなかなかいい時間でしたね。さまざまな花咲き乱れて。池の水のおもてにはすれすれに鷺が飛び、頭上には切れ切れの夏雲が流れて。
 ともかく、この10年間、なによりも芸術の「現場」にタッチする仕事をすることができたのはありがたいことでした。「現場」を知らない「理論」なんてもうほとんど時代遅れですものね。
 


↑ページの先頭へ