破急風光帖

 

★  日日行行(596)

2023.01.08

* 昨年中に終わらせる予定だった「声/涙 十選」、あと二つ残っていますね。でも、ここまで来ると、あまりにもたくさんあるというか、何を選んだらいいのか、とまどいます。じつは、昔、フィーシャー=ディスカウの二枚組みレコードで「冬の旅」を聴いていた、でも、いまはCDもってないな、と思って急いで買ってきて聴いてみたりしました。もちろん、泣けます。「菩提樹」なんて、ドイツ語の歌詞覚えていますから(大学2年生のときに、ドイツ語習おうと夏休みに学習院のドイツ語講習に通ったのでした!結局、ものになりませんでしたが)。

 そう思うと、「十選(9)」はこれにして、あとの(10)は詰め込むことにしようかな?
 不思議なことに、わたしの思考にとっては、ヴァルター・ベンヤミンが「天使」でした。ずっとかれの思考に学ばせてもらった。ベンヤミンの足跡をたずねて、(モスクワには行っていないのですが)、サン・ジミニアーノに行ったり、ワイマールまでアウトバーンを飛ばして行ってみたり、もちろんかれが死んだスペインの国境の街ポル・ボウにも行ってみた。かれほど、わたしを旅立たせた人はいない。実際、わたしの哲学的思考の第1歩である『起源と根源』は、ハイデガーに対抗して、カフカとベンヤミンを持ち出すことで、わたし自身の「思考の道」を切り開こうをしたわけです(そういえばカフカのことを思ってプラハにも行きましたね)。にもかかわらず、ドイツ語を読みこなすまでにはいかなかった。まあ、ベンヤミン自身もパリに憧れ、パリに住んだ人ですから、いいことにしましょう、勝手に自分をゆるすわけです。
 というわけで、ひさしぶりに聴いて感動したディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウの「菩提樹」あるいは「春の夢」を「十選(9)」にあげさせてもらいます。


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