破急風光帖

 

★  日日行行(363)

2020.06.14

* 「先生ご自身にとっての《影との戦い》はどのようなものだったのでしょう?」ーーう〜ん、それを聞いてくるか、といささかうろたえ、同時に感動しました。

 昨日午前中、Zoomを使って、1時間のネット上のトーク。相手は今月『未来の学校のつくりかた』(教育開発研究所)を刊行した税所篤快さん。1月に六本木ヒルズでおこなわれた、わたしの『若い人のための10冊の本』のイベントに来てくださった方。それ以外にはお会いしたことはないのですが、われわれの2冊の本をたがいに語るトークをしようということになったのでした。
 わたしのほうは、よし、それなら、この若い著者に少しイジワルな質問をしようと用意していたのですが、その質問をする前に、相手から先制パンチ。『10冊の本』の9番目『ゲド戦記』を読んできてくれて、それを軸にわたしに質問がとんできました。
 じつは、この『ゲド戦記』こそ、若い人のためのイニシエーションというわたしの本の精神の核にあったものだったのですが、税所さんは見事にそれをつかまえて、「学校」というものは「イニシエーション」の場なのだと結びつけてくれました。読んでくれたなあ、という感覚です。「読む」ってこういうことだよなあ、と。
 で、わたし自身の《影との戦い》? 税所さんもちゃんと予期していたように、そんな「秘密」を簡単にはばらせません。それは、その人のもっとも大事な秘密ですから。しかも他人に語るようなことでもないんですね。
 でも、はっきりしていますね、どんな形であれ、自分自身の《影との戦い》(それは文字通り「命がけ」なんですが)を通過!した人と、してない人とでは、決定的に違う。それ以上に重要なことなんてじつは人生にはないのかもしれません。ファンタジー小説だからですが、ル・グゥインはそれをさらっと書いてくれました。すごいことです。
 まあ、人生そのものがいつまでも終わりなきイニシエーションなのでしょうけど。
 税所さんとのこの1時間のトークはたしかYouTubeでアップされると聞きました。情報をいただいたらここにお知らせいたしますね。


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