破急風光帖

 

★  日日行行(223)

2019.02.22

* わたしのスマホのメーターによると、この1週間の毎日の歩数の平均値が10734!距離も8キロ以上です。毎日パリを歩いてますね。

 今日も14000歩あまり。昼すぎに出てバスでリュクサンブール公園まで。そこから歩いて、途中、サン・ジャックの昔よく行っていた中華のミラマで軽い昼食。さらに歩いてセーヌを渡り、市庁舎の前の河岸でブキニストのおばさんと会話しながら、一冊古本を買い求め、さらにマレー地区の昨日行ったミケルのアトリエに。もちろんかれはすでに出発していないのだけど、朝、Victoriaさんからメールをもらって、スペインではじまった展覧会のカタログが届いたから寄ってください、と。小さな版ですが、海のブルーがきれいなすてきなカタログをいただきました。そこからメトロで北へ。ショーモンの丘に近い駅で降りて、丘の公園を散歩。時間があったので、カフェで珈琲。

 そして3時半に、パスカル・キニャールさんのお宅へ。かれも、昨日、コルシカから帰ってきたところで、明日はサンスのお家(川岸で竹がはえた隠者の家なのだそうですが)へ行くので、今日しかない、と言われていました。こちらは、『午前4時のブルー』の第2号を届けたかったのですね。わたしが撮ったキニャールさんの茶会の写真も載っているし。で、ふたりだけで1時間。いろいろなことを話しました。前日のパスカル・フラマンさんとも知り合いでいっしょにラスコー洞窟に入ったんだ、という話とか。ツェランやブランショの思い出なども出て、貴重な証言をたくさんもらいました。最後は詩について、愛について。そして帰り際に、なんと3冊も新著をいただいてしまいました。こちらからはかれが読めない言語で書かれた雑誌1冊届けただけなのに。これもありがたいことですね。なかの一冊は La vie n'est pas une biographie (人生は伝記ではない)というもの。「これ、君はきっと気にいってくれるよ、そう思うでしょ?人生は物語ではないって?」。物語を超えたところに人生がある、そう。でも、物語がないとそれすらもわからないわけですね。フランスのもっとも難解な作家との濃密な1時間でありました。

 その後、ここまで来たのだから、と坂を降りて、昔、はじめてパリに来たときに泊めてもらった、(一昨年の冬に亡くなった)渡辺公三さんが住んでいたav. Jean Jaures 4番地を見に行きました。ルドゥーのロトンドの前。すっかり変わっていたけど、扉は同じだったかな。なつかしく。でも感傷はなし。

 それからメトロで、ミロメニルへ移動。朝、画家の友人の原田宏さんから案内をいただいたので、エリゼ宮に近い画廊Grand Eternaでの彫刻家の展覧会のオープニングに顔を出しました。作家のPolさんとも少しお喋り。宏さんもわたしの留学時代からのつきあいです。かれはその頃、モンマルトルのかつてピカソも住んでいたいわゆる「洗濯船」のアトリエに住んでいたので、近所ということでよく深夜でかけてふたりで将棋をさしたりしてました。また日本ではかれの先生であった山口長男先生の家におしかけてお話しをうかがったりしましたね。

 結局、わたしにとっては、パリはこのようにアーティスト/作家との交流の街ですね。いわゆる大学の先生との交流よりは、アーティストとの交流がはるかに深い。楽しい。多くのことを学びます。孤独と孤独のあいだに一瞬、火花が散るみたいな、その激しさに魅せられますね。なんだか、自分にとってのパリが何であったか、を再確認する滞在であったような気がしてきます。なにかが確かめられたかな、頭で、というよりは、毎日1万歩以上歩いたその身体を通して。暖かな天気だったことが幸いしましたね。
 
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