破急風光帖

 

★  日日行行(636)

2023.11.01

* 昨日は、10年以上ぶりに、軽井沢のセゾン現代美術館に行きました。今日から長期休館ときいてもいたし、なにしろ展覧会が荒川修作/マドリン・ギンズの「意味のメカニズム」展ですから、思い出多いこのミュージアム、もう一度行っておこうかな、と。

 なにしろ、この美術館の理事だったときに、大きな展覧会を3回まるまるオーガナイズし、さらには、2010年には茶会、さらに2012年夏には「ブルー・カタストロフィー」の展示も。9.11あるいは3.11といった歴史的なカタストロフィーに対応して、この美術館所蔵のすばらしい現代アート作品を、わたし自身のアイデアに基づいて展示させてもらったのです。なんという贅沢なことだったでしょう。
 そして荒川さん。かれとは7回も対話をしてそれがまとまって『幽霊の真理』(水声社)として刊行されています。かれもまた、わたしに、あるいはわたしのほうが、「幽霊」のようにつきまとってきた「真理」でありました。
 なつかしかったですね。いろいろこみ上げてくる思いがありました。
 晩秋の透明な光のなかで、ポロックやロスコの作品を見ながら、またそれについてテクストを書いたこともある『意味のメカニズム」の全展示を見ながら、わたしは、自分が生きた道を回想していたのかもしれません。館を出て、ひとり、小川が流れる林の庭の道を歩きながら、誰に対してだったか、「ありがとう」と呟いているわたしがいました。


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