★ 日日行行(630)
2023.09.01
* 9月になりました。
今日、発行の「週刊 読書人」の1面2面にわたしのインタビュー記事が載っています。拙著『存在とは何か』(PHP研究所)にこめたわたしの気持ちなどを語ったものです。そこでは本のなかには書かなかったメルロ=ポンティの哲学へと遠い挨拶のようなものも語ってしまいました。
少し気分を変えなくては、という思いもあって、今日は急に思い立って、世田谷パブリックシアターに山海塾の公演「TOTEM 真空と高み」を観に行きました。じつは30日の初日にご招待を受け手いたのですが、行けなかったので、そうだ、と連絡してみたら、今日でもご招待いただけるというありがたい展開で、それならと妻も誘って行ってきました。驚いたのが、舞台は、美術家の中西夏之さんの作品からの着想となっているのですが、わたしが『存在とは何か』で展開した、四元マトリックスそのものの空間化。しかも、TOTEM、わたし自身が拙著でアニミスムに回収したテーマ。副題の「真空と高み」はまさに、わたしにとっての虚と実の交叉の軸そのものでした。
演出の天児牛大さんはわたしと同じ歳。かれが1980年にはじめてパリで海外公演をうったときパリ郊外の劇場で通訳をしたのが最初の出会いでした。断続的にではあるが、いままで続いている。しかも、その舞台の情景は、どこかわたしが捉えようとしている世界の相貌に相通じている、不思議な共感覚に襲われます。そう、天児さんもまた「人類」というこの苛酷な存在に美を与え返そうとしているんだ、と共感するのです(前記「読書人」の記事のタイトルは「人類という普遍性へと知を開く」なのですから!
回帰する時、流れて行く時・・・わたしもまたそのプロバブルな拡がりへと、きっと流されて行くのでしょう。