破急風光帖

 

★  日日行行(609)

2023.04.03

* 昨夜、坂本龍一さんの訃報が流れました。とうとう来たか、という感覚です。お正月にNHKで放送されたピアノ演奏も聴いていましたけど・・・厳しい、しかし美しい人生を貫かれたなあ、と。ご冥福を祈ります。

 わたしはお会いしたのは二度だけですね。最初の出会いは、拙著『知のオデュッセイア』(東京大学出版会)のなかにテクストがありますが、2007年かな、駒場での対話の会、会場に銀杏の葉を敷き詰めてお迎えしたのを思い出します。そのなかで、わたしが書いている一文を取り上げるなら、「坂本龍一とは〈聴く人〉なのだ。誰よりも世界を〈聴く人〉なのだーーそう、これがたぶん、わたしが探していた坂本さんのモラルなのではなかったか。坂本さんも嬉しそうにひと言〈聴く人〉と頷いてくれて、それが対話の着地点だった」と。
 二度目は、坂本さんが青山学院にいらして福岡さんとトークをしたときかな。そのころ中島さんとの共著『日本を解き放つ』をつくっていたときで、坂本さんと武満さんの関係について確かめたいことがあったので、控え室にお邪魔して数分、立ち話をさせてもらいましたね。
 あとは、最初の駒場の会のときに、大量に仕入れて聴いたかれのCDを車を運転しながら聴くことが多かったですね。
 やはり同世代の「(遠い)友人」かなあ・・・わたしが属していた「ひとつの時代」というものが、こうして少しずつ終わっていくのだ、という実感が押し寄せてきます。波が退いていく感覚。わたしはまだかろうじて波打ちぎわに立っているつもりですが・・・櫻も散っていきますね・・・


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