★ 日日行行(597)
* 「声/泪 十選」(10)最終回です。前回、予告したように「詰め込み」かな?無謀な企画だったということがよくわかりました。つまりは歌が呼び起こすわたしの過去の時間、けっしてなにかはっきりとした出来事があったというわけではなくて、わたしが実存していた過去の時間が回帰してくる、そこに揺さぶられる心があるというわけで、最初に言ったようにやっぱり「老人性感傷症」なんですね。でも、そのように何千もの歌が自分の心のなかに刻まれているというのは、すばらしいですね。わたしの本箱の隅には、1976年に集英社から刊行された『ヒットソング集 うたの世界』という1001曲の歌詞が集められた本があるのですが、それを見ても7割8割はメロディーが口をついて出てきますから。わたしのように音痴で、音楽に入れ込んでていたわけではない人間にも、そのように膨大な「歌」がインストールされている!驚くべきことだと思います。
で、わたしがこの人生でいちばんたくさん聴いたのは?と自問すると、答えはやはりBeatlesでしょうね。けっして熱心なフアンというわけでもなかったのだけど、全部聴いて、しかも残っていますね。そのなかであえてこの「声/泪」のために一曲をあげるとなったら・・・最近の気分ではTHE LONG AND WINDING ROADかな。Lead me to your door!! やっぱり泣けますね。
これで締めくくりでいいのですが、ほかにもアフリカからはSalif Keita、アイルランドからはEnya,ブラジルからはGilberto、合衆国からはCarpentersのKarenの声が響いてきますね。そう、Beatlesもそうですが、どこかにYesterday という感覚がありますね(yesterday once moreです)。ほかにも映画音楽から「バグダット・カフェ」とか、忘れてはいけない、「タイタニック」とか、わたしの心のCD装置からさまざまな歌が立ち昇ります。今回、このために、何枚かCDも買ったりして、なつかしい歌声を聴くことができました。
声と回帰(現象ではなくてね)。回帰する声。それもきっと「存在のエラボレーション」を可能にしてくれるものだと思います。