★ 日日行行(591)
* 「声/泪 十選」(5−2)追加です。
この「十選」、ポイントは「泪」にあります。で、前回のシャンソンの項に追加しておかなければ・・と。それはブラッサンス。かれのベストの曲(ほとんどが1952年ー54年です。この時代のパリ/フランスがわかっていないといけないんですが・・・)を集めたCD2枚30曲以上を聞いていました。ほとんどすべての曲を知っているし、フランス語の歌詞も出てきます。そのなかで、わたしの心の井戸に水が押し寄せてきたのは・・・
やはりというべきか、IL N'Y A PAS D'AMOUR HEUREUX(しあわせな恋はない)、アラゴンの詩ですが、若い時にどれくらいこれを歌っていたか。ブラッサンスの曲はだいたい皮肉がきいていて、歌詞がとてもおもしろい。けっして情に訴えるような感じではないのですが、この曲はわたしの心の奥底にしみ通っているなあと感じました。なつかしい曲ばかりなのですが、もうひとつ、こみあげるものがあったのが、ブラッサンス自作のCHANSON POUR L'AUVERGAT(オーヴェルニュ人のための歌)、「わたしが貧しいときに、一切れのパンを、薪をくれた」オーヴェルニュ人への感謝の歌なのですが、ce n'était rien qu'un peu de bois(わずかな薪にすぎなかったんだけど)と続くフレーズに泪が滲みます。このCDは最後に、この同じ歌を、ジュリエット・グレコが歌っているのですが、たしかにすてきな歌い口なのだけど、やはり昔聴いていたブラッサンスの、まさにシンプルな、飾りのない、素朴な語り口に「人間の真実」みたいなものを感じてしまいます。
そうだよなあ、ブラッサンスの歌はカセットテープを20本くらい持っていたよなあ、と思い出します。パリでも毎日聴いていた。
そう、ワタシノ魂ノナカデハ ソノ声ハイマデモ灯ッテイル んです。まるで夜空の燈台のように、とわたしも歌ってしまいますね。