破急風光帖

 

★  日日行行(556)

2022.06.13

* パリは夏。連日、日中は30度近いのではないかしら。そして夜の9時でも明るい青空が広がっています。この夏至の光を見たいというのが、今回、この時期に来たかったひとつの理由でした.大学で授業をしていた頃はけっして来ることができない時期でしたから。

 だから、よく歩いています。毎日1万歩以上は歩いているのではないかしら。ただパリの街を歩いているというだけ。よく知っているところばかり。そして、いつものカフェなどで友人と食事をしたりする。それでいいのです。でも、一昨日は、教えてもらって、モンパルナスのジャコメッティ美術館(Fondation Giakometti-Insittut)にはじめて行きました。とても小さな美術館。そこに、ジャコメッティの小さなアトリエが再現されていて、ベッド、イーゼル、椅子、かれが描いたスケッチがそのまま残されている壁(壁を移設したようです)、たくさんの石膏の像(よく知っているものがたくさんありました)、テーブルに上に広げられた新聞・・・などが雑然とある。実際のアトリエは、面積23m四方だったようなので、その大きさになっているのだと思います。その日、ちょうどアトリエがあった道Hippolyte-Maindronを通ったところでもあったので、二方をガラスの壁に囲まれた人工的な空間ではありますが、ああ、あの「中」はこんなだったんだ、と胸に迫るものがありました。かれが、いつもの癖で、ボールペンなどで、たくさん人の顔を描きこんでしまっている本も展示されていたのですが、多くがSérie Noire (ブラック・シリーズ)という探偵物の本が多かったですね。へえ、ジャコメッティはこういうのを読んでいたんだ、と発見でした。
 なにか、自分がからっぽという感じがしますね。そのからっぽに、パリの夏至の光が落ちてくる・・・extaseはなく、むしろmélancolieかな?わがexistance doucement vide!とか。
 (パリのアパルトマンの情報状況は改善していません。木曜に技術者が来ることになりました。)


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