破急風光帖

 

★  日日行行(554)

2022.06.06

* 一挙に梅雨入りですね。この週末は、これから一月ほど行くことができないので、八ヶ岳の小屋の庭を見に行ってました。この間に、庭師の恵子さんが、今年の冬の厳しさで枯れてしまった薔薇のかわりの薔薇を植えてくれていました。その薔薇を眺めながら、緑ますます濃い林のなかに、さまざまな鳥たちの声が響きます。なかには、どうしてもFrench Peopleと聞えてしまう鳥もいる。わたしはまったく鳥の名前に通じていないので、何なのかわからないのですけれど。カッコーくらいはなんとかわかりますが。それにはやくも、蝉とか。森は生命のノイズで満ちています。その重なり合う波動のなかに、わたしも、いや、(  )am being ですかね、つつましい、ささやかな「永遠」として。

 明後日には成田からパリに向けて飛ぶ予定です。すでに、たったいま、スーツケースは送り出しました。明日の夜は、成田のホテル泊ということになります。
 いくつか、人に会う予定が入っていないわけではありませんが、昔のように、公的な仕事があるわけではない、ただ夏至のときのパリの光のもとに、自分をさらしてみるというだけの旅かもしれません。いや、「旅」ですらなくて、ただ、もうひとつの自分の場所に行く、それだけです。
 哲学者のドミニック・レステルさんがちょうど日本にいらしたみたいで、「会おうか?」とメールをいただいたのですが、時間の調節ができず、「なんだ、こっちが来たのに、きみは逃げちゃうのか?」と。まあ、帰国後お会いする約束をして、逃げちゃいます。そう、「逃げる」fuirというのは悪くないかな、Faites votre destin, âmes désordonnés, Et fuyez l'infini que vous portez en vous! ボードレールの発禁になった詩 Femmes damnées の最後です。・・・あなたがあなたのなかに抱きもっている永遠から逃げなさい!・・・なんだか、優しい口調で言いたいですね。やっぱり「存在の冒険」の主題歌はボードレールになりますかね。


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