★ 日日行行(522)
* 頌春
新年おめでとうございます。
今年は干支で言えば、寅年。わたしの年です。12年サイクルで6回車輪がまわって、7回目に突入です。この輪を廻せるということが、すでにありがたいことなのかもしれません。すでに多くの同年代の友人が消えてしまっていますので。そう思うと、それぞれの「いま」をたいせつに生きるしかないのですが、ではその「たいせつ」とは?と問うと、「まあ、そのように問うことだよ」という答えしか帰ってきませんね。新年そうそう乱調気味の思考です。
昨日の元旦は、夜、いつものようにTVでウィーンからのコンサート・ライブ中継を聴いていましたが、指揮者がバレンボイムでした。それだけで感無量だったなあ。1994年ザルツブルクで、かれの指揮で(シェロー演出の)「ドン・ジョヴァンニ」観てますね。あれは、わたしの人生のひとつの「明け」の象徴ではあったのでした(拙著『大学は緑の眼をもつ』未来社でそのことを書いています)。そして、最近書いた『若い人への10冊の本』(ちくまプリマー新書)でも、かれとサイードとの対話を取り上げましたし、わたしにとっては、身近に感じることができる指揮者であったので。
十数年前に網膜剥離の手術をしたときに、手術室に運ばれるときにも、これはカルロス・クライバーの指揮でしたが、「美しき青きドナウ」を聴いていたのを思い出します。毎年、ウィーンから送られてくるこの曲の波のリズムを聴きながらワインを飲むのがひそやかな新年の儀礼です。この波に揺られて運ばれて・・・何処へでも・・・彼岸はまだ遠そうだし・・・中州の浅瀬にでも打ち上げられるのかしら・・・それもまたよし、元旦の夜・・・
そうそう、あれは数年前だったか、はじめてウィーンのあの楽友協会のホールでウィーンフィルの響きを聴いて、ほかのオケとはまったく違う独特な軽やかさと柔らかさに思わず涙が滲んだことも思い出しますね。
どうぞ、みなさまにとって、2022年よい年となりますように・・・