破急風光帖

 

★  日日行行(513)

2021.11.30

* 11月も終りです。今年のNovember Stepsは、わたしの20代の過去が戻ってきたSteps だったように思います。マルセル・デュシャン、マネについてトークを行うことになりましたし、さらに決定的なのは、わたしの「スタート・ライン」とも言うべき70年代のテクストが一冊の本になることです。

 『存在の冒険』ーーーこれは、わたしが25歳のときに書いた、ボードレールの詩を論じた修士論文なのですが、それがなんと、46年の月日を経て、本になって公開されます。思いがけない展開です。これは、昨年、中島さんとやった対談(EAA Booklrt-13)が切っ掛けとなって、突然、わたしの人生のマキシムは「存在の冒険」であったと納得したからでしたが・・・いろいろ紆余曲折がありまして、若い人たちの力添えを経て、年末に、水声社から刊行されることになりました。
 読み返して、びっくりなのは、わたしがまったく「研究』的な態度をとっていないこと。ただひたすら、ボードレールという詩人の「存在の冒険」をわたしはこう読む!という、ある意味では、傲岸不遜な態度が貫かれています。その「態度」は、71歳のいまに至るまで、変わることなき吾が「態度」。わたしとしては、その「激しさ」を、なによりも若い人たちに届けたいですね。
 補遺として、同時代に書いた美術評論(「劇(ドラマ)ーー読むことについて」)、わたしのもうひとつのマニフェストとも言うべき詩論(「希望の詩学」)ーーーどちらも1972年執筆、わたしが22歳のときのテクストですーーーも収録されることになっています。
 出版することに躊躇迷いがなかったわけではありませんが、いまの眼から見て、それなりに、わたしなりの「Furor」が貫かれていると判断し、出版していただくことにしました。
 そう、「時」というものは、戻ってきます。反復ではなく、回帰。
 その回帰こそ、じつは、現在を照らす光でもあると思います。
 またしても激しい11月でありました。
 


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