破急風光帖

 

★  日日行行(502)

2021.10.20

* パリ最後の日となりました。明日昼すぎのフライトで帰国予定です。今朝は、これまで続いた奇跡的とも思えた秋晴れがうってかわって、灰色の空、小雨もおちてきて、風もある、愁色(秋色)一挙に深まりました。それがなにであれ、なにかが終るという感覚はさみしいですね。パリ、メランコリックに。

 昨夜は、10日前くらいに、(バルチュスの奥様だった節子さんの展覧会に一緒に行こうという)約束を、わたしのミスですっぽかしてしまった、それが心の重さにもなっていたのですが、そのサンドラ/パスカル夫妻から招かれて、パリの秘密の空間とも言うべき「ロハンの中庭」へ。わたしのポカをゆるしてくれた夫妻と、シャンパーニュを傾けつつ、パリらしい会話をしました。
 なにしろナーガルジュナの「中論」をめぐって、パスカルさんがダライ・ラマの講義を受けたときのノートなどを引っぱりだしてきて語り合うわけですから・・・それにこちらもさらっと応答したりして・・・そういうことがパリなんですね。かれは、元は出版社の社長ですが、とくに学者というわけではない。それでも、自然とそういう会話が弾むわけです。それが楽しい。
 イランから届いたばかりというサフランのお茶をいただいて、(タクシーがつかまらず)深夜のパリをメトロをつかって帰宅しました。
 これでいいな、今回のパリは。

 これから昨日のPCR検査の結果をもらいにラボに行って、あとはアパルトマンの掃除ですね。やはり小さな空間とはいえ、自分の昔の本が置いたままだったりする、自分の身体がなじんでいる場所があるということはありがたい。ホテルの部屋だったらツーリスト意識が抜けないでしょうけど、一応、「自分の街」という感じがもてますから。

 窓の外の小さな裏庭の茂みに、小さな鳥がたくさん飛んできます。パリはまた、密かに「鳥の街」でもあるんです(そういえば、昨日の午後は、イレーネさんと「鳥」の話をしましたね、モンパルナスのいつものカフェで!)
 


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