破急風光帖

 

★  日日行行(493)

2021.10.03

* まずはパリの街に出てみようと、午後から歩きました。ちょうど「火と水の婚礼」45(『午前4時のブルー』最終号)で打ち明けたように、まずはサン・シュルピス寺院へ。「天使のシャペル」でドラクロワの絵を見て、聖堂のなかを一周。それからフュルスタンベルク広場を抜けて、かつてポール・オースターに捧げたテクスト(『思考の天球』)で触れたことのあるラ・パレットの前を通って、ポン・ヌフ(橋)へ。その尖端のヴェール・ギャラン公園の柳に挨拶して、それからシテ島を抜けてシャトレのサン・ジャックの塔へ。『若い人のための10冊の本』で書いたようにパスカル君にボンジュールなのですが、ちょうどガイド付きで塔にのぼれる見学会があると。さっそく12E払って申し込みました。

 感動しました。77年に最初にパリに来て以来、いったい何十回この街に来たのだったか、でもサン・ジャックの塔は、わたしにとって、いちばん大事なパリの「目印」なのに、一度ものぼったことがなかった。(なぜかエッフェル塔にのぼる気は起きないんですね)近くのポンピドゥーセンターの最上階からパリの街を眺めるのが好きだったのですが、それよりも高い!圧倒的な感覚。狭い石の螺旋階段を何度もぐるぐるしてのぼって急に開けるパリの街、そのほんとうの「顔」を見たような気がしましたね。
 それから、シテ島の花市場からサン・ジャック通りを通り、ノートルダム寺院の前を抜けて、ソルボンヌをかすめて、最後はリュクサンブール公園へ。そこで雨が落ちてきたので、これも昔からよく行っていたカフェ、Le Rostandに入りました。「保健パスのQRコード?」と言われるのですが、日本の接種証明書のコピーを見せるとそれを向こうが写メしてOK。それだけのことでした。嬉しかったので、シャンパーニュを一杯頼んで、ハムのオムレツも、と言ったら、マネージャーが「おかしな組み合わせだねえ!」と。かもしれないが、知ったことか。なんとなくハッピーなんですね。
 帰りはオデオンからメトロに乗りましたが、さすがにメトロでは全員がマスクをしていました。これでだいたいいまの様子がつかめたかな。こちらもパリの身体を取り戻せた気がしました。
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