破急風光帖

 

★  日日行行(480)

2021.08.25

* で、一夜明けて。昨夜は、昨年末に刊行した自分の『死の秘密、《希望》の火』(水声社)のナンシー/ラクーラバルトのところを読み返していました。この本のために昨年7月にナンシーとメールのやりとりをしたのが、わたしにとっては最後の交信でした。そこには、1980年にわたしがナンシーから受け取った手紙も翻訳して載せました。40年にわたる「交流」でした。

 これで、わたしがこの本と『《人間》への過激な問いかけ』(水声社)の2冊でささやかな「交流」のドキュメントをまとめたフランス現代哲学(思想)の思想家/哲学者/文学者がみなさん、旅たってしまいました。最後の「燈台」の光が消えた(ボヤンはそれを「哲学の星の光」としていましたが、同じこと)・・・あとには、暗い夜の海に波の音が響くのみ・・・・少なくともわたしにとっては、自分がそれを生きたひとつの「時代」が終ったのだ、という感覚がしてきますね。まあ、だからこそ、わたしも去年、この2冊をどうしてもまとめておきたかったのでしたが・・・・
 ナンシーが心臓移植手術を受けたときに、「わたしはわたしの神々に祈る!」とメールしたのを思いだします。いま、かれとわたしのあいだにある「無・無神論」を延長しつつ、ジャン=リュックに「よき旅立ちであれ!」と祈りをささげます。(祈り、それが「神」を超える、われわれ人間の過激な行為だものね、Jean=Luc! Merci!)


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