破急風光帖

 

★  日日行行(478)

2021.08.21

* Clear sky, Just of your birds in silence とはじまる8行の英語の手書きの草稿。最後は、Come right the time ! WE are always with と書いてあるけれど、途中は、解読できない単語もある。JやEが大文字になっているのは、それを縦に並べるとひとつの人名が浮かびあがるようになっているから。で、その人名は、John Cage。

 昨日、編集者経由である方から、昔、わたしが翻訳したらしいジョン・ケージのテクストが出てきたと、その経緯について問いあわせを受けて、そうだ、わたしはケージが来日したときにご挨拶してるな、と思い出そうと膨大な古い資料の山をさぐってみると、武満徹さんがなさっていたMusic Today の第10回(1982年)のプログラムが出てきました。ああ、このときだ!と思ったら、なかに一枚の紙があって、そこに読みにくい字で英語のテクストが書いてあったわけ。タイトルはThanksとなっていて、最後に、6.6.1982, Shibuya,Tokyoとある。どうもテクストが完成していないので、きっとケージ風のテクストを書いて渡そうとして、できなかったのではないか、と推測します。なにしろなにも覚えていませんから。でも、まあ、こういうことをやろうとする人間ではあるよなあ、わたしは、とおかしくて笑ってしまいました。
 こういう小さな極小の、出会いというより、交差、が、砂のなかできらっと光る粒のように、結構いっぱい詰まっているのが、わが人生という、(もちろん泥もいっぱい!)砂袋かもしれませんね。これがあると、たとえばジョン・ケージという人が、すぐ隣りにいる人という感覚が生まれてくる。遠い人ではなくて。
 もちろん錯覚なのですけれど、そこに「同時代性」とか「世界市民感覚」みたいなものが生まれてくる。わたしにとっては、(研究などではなく)それこそが大事だったと思います。


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